くらし

【編集部こぼれ話】辞書のおもしろさを再発見。

「恋愛」という言葉を、新明解国語辞典(第七版)でひいてみます。
「特定の異性に対してほかの全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。」

なんとも情緒的で、独特な語釈です。

一方、広辞苑(第七版)を見てみると、
「男女が互いに相手をこいしたうこと。またその感情。こい」

と、簡潔でなんだかそっけない感じがします。

感情豊かでポエマーな新明解さんに、冷静沈着で無駄口はたたかない広辞苑さん……。なんだか辞書に人格があるようでおもしろいと思いませんか?

これまで辞書というと、客観的に正しい言葉の意味を定義したものというイメージだったのですが、今回、広辞苑の編集者の方に取材をしてみると、辞書は意外にも自由で、ある種、主観的に作られているのだなぁという発見がありました。

いわゆる新語や俗語と言われる言葉について、何を掲載するかは辞書によってばらつきがあるし(広辞苑は保守的で、新しい言葉を先んじては入れない主義)、広辞苑に限って言えば、どの言葉を採用するかの明確な判断基準はなく、社内から集められた数名の編集者が議論して決めるとか。語釈についても上記のように辞書ごとにかなり違っていて、つまり正解はないのです。
本誌では、広辞苑にまつわる雑学や改訂の舞台裏も紹介しているのでぜひチェックを。

辞書をひくなんて学生時代以来でしたが、調べ始めると、日本語の奥深さはなんとも興味深く。ネットで何でも検索できる時代だからこそ、改めて辞書を引き、言葉について考えてみるというのもおもしろいかもしれません。

広辞苑を発行する岩波書店、辞典編集部のオフィスの一角。過去の校正紙がこんなにきれいに保管されている。

『クロワッサン』975号特集「スマホ時代の、伝わる文章術。」編集部こぼれ話

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