仏像といえば、京都と奈良に集中している印象だが、中日文化センターで仏像講座を持つようになり、愛知、岐阜、三重のお寺をあちこち回った田中さん。じつはこの地方はたくさんの美しい仏像の宝庫であることを発見!
「愛知は古くから栄えていたので寺院の数は日本でいちばん多いんです。重要文化財に指定されている仏像もたくさんあります。岐阜は白山信仰が盛んなので、十一面観音や阿弥陀如来の素晴らしいものがあるし、江戸時代の仏師・円空の出身地とされ、円空仏も数多く残されています。三重は、伊勢神宮があるので神仏習合の仏像が充実しています」
本書は、その中から選りすぐった仏像107体を田中さんが温かみのあるイラストに起こし、見逃せないポイントを解説しているので、仏像初心者でもわかりやすい構成になっている。
「私の場合、まずは仏様のお顔をじっくり拝観します。手作りだからみんなお顔が違います。立ったり座ったりいろいろな角度から見るようにしています。不思議なことに、朝と夜では表情が違う、角度や灯明の陰影でも優しそうに見えたり、怒って見えたり。そのときの自分の気持ちによっても違って見えますね」