くらし

介護トラブルは家族、近所の人など社会全体に関わる問題である

介護に関するトラブルは単純に介護=身体的困難に対して補助したり監護したりすることに対して起こるだけではない。お金や住居、周囲の人々との関係など内容はさまざま。さらに介護が必要な人だけでなく、介護する家族、近所の人なども含め社会全体に関わってくる。
  • 撮影・西邑泰和、松本幸子 イラストレーション・内田尚子 執筆 回遊舎・(酒井富士子・番場由紀江・尾崎寿子)、 鈴木弥生

トラブルが起きる前のシグナルに気づくのが 一番の対策です。

日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は27・7%(2017年9月15日現在)と、過去最高を更新した。介護トラブルは、高齢者の増加により多様化、かつ複雑になっている。身近に介護が必要な人がいないとその大変さはなかなか実感できないが、介護トラブルはある日突然、誰にでもやってくる問題だ。  

そんな介護トラブルを事件や事故にしないためには、身近な人の「これまでと違う」「ちょっとヘン」といったシグナルを見逃さないことが重要だ。たとえば認知症は早く治療を始めれば、進行を遅らせることができる。介護トラブルは、対策より先に予防することを意識したい。

介護トラブルの“芽”はこんなところに……

・家の中から怒鳴り声が聞こえる
・買い物のとき、お金の計算ができない
最近、姿を見かけない
・会話がかみ合わなくなった
・ポストに新聞や郵便物がたまっている
・洗濯物が干したままになっている

介護保険サービスを利用する手続き

ケアマネジャーが要支援・要介護度、および本人や家族の希望をふまえてケアプランを作成。 ケアプランに基づき、サービスの提供を開始

手続きを行う

手続きする人 :1.本人または家族 2.指定代行機関のケアマネジャー
手続きする場所:住民票のある市区町村の介護保険窓口、 福祉事務所、地域包括支援センター

介護認定を受ける

1.市町村職員などが面接により認定調査を行う
2.調査結果と主治医の意見書をもとに介護認定審査会で審査し、市町村が要支援・要介護度を決定
3.審査結果は申請から30日以内に本人に通知される

介護認定とは

支援は2段階:要支援1、2
要介護は5段階:要介護1、2、3、4、5
※数字が上がるにつれ重くなる
要支援の場合は介護予防サービス、要介護の場合は介護サービスを限度額の範囲内で受けることができる。

介護保険サービスは申請して利用する

65歳以上の人が、日常生活の中で支援や介護の必要を感じるようになったら、介護保険サービスの利用を検討しよう。該当しない場合も、介護予防・生活支援サービスなどを利用できる。

利用できるサービスは要介護度によって異なる

▼要介護(要支援)度ごとの状態

自立状態:1人で問題なく日常生活が送れる(支援や介護が必要であるとは認められない)

要支援1:日常生活(食事や排泄・入浴等)はほぼ自分で行うことができるが、立ち上がりや歩行などに支えを必要とする。要介護状態にならないよう支援が必要

要支援2:排泄や入浴の一部に介助が必要になるなど、日常生活を行う能力が要支援1よりわずかに低下。要介護状態にならないように支援が必要

要介護 1:日常生活や歩行、身の回りの世話などに一部に介助が必要。問題行動や理解の低下がみられることも

要介護 2:食事や排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱に一部または多くの介助が必要。立ち上がりや歩行が自力ではできない場合がある。問題行動や理解の低下がみられることも

要介護3:食事や排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱に多くの介助が必要。立ち上がりや歩行が自力ではできない。問題行動や理解の低下がいくつかみられることも

要介護4:日常生活全般(食事や排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱)において全面的な介助が必要。多くの問題行動や理解の低下がみられることがある

要介護5:日常生活全般(食事や排泄・入浴・洗顔・衣服の着脱)において全面的な介助が必要。意思の伝達も困難なことが多い

※利用者は収入に応じて1~2割負担
介護保険サービスは、介護認定で判定された要介護状態区分(左表)に応じて、1カ月に利用できる金額の上限(限度額)が設けられている。認定の有効期間は、6カ月〜24カ月程度。

クロワッサン特別編集 身内がトラブルに遭ったときの手続き』
— マガジンハウス 編
定価:880円 (税込)

本書では法テラスのデータを元に、特に40代?60代の女性の相談が多かったにトラブル実例を紹介。
それをケーススタディとして、法律的に適切な対処法をレクチャーしていきます。
まさに「困ったときの法頼み」。一家に一冊必携です。

監修:
田中晴雄(たなか はるお)さん/弁護士
早稲田大学法学部卒。昭和62年に弁護士登録。平成10年に田中晴雄法律事務所を開設し、代表を務める。平成16年日本弁護士連合会事務次長に就任。平成25年~29年9月まで日本司法支援センター常務理事。相続、交通事故、離婚、債務整理、不動産トラブル、企業法務などの案件に取り組んでいる。

太田晃弘(おおた あきひろ)さん/弁護士
平成16年に弁護士登録。平成18年に法テラスのスタッフ弁護士となり、岐阜県へ赴任。司法過疎地での弁護士業務に取り組む。平成22年から東京パブリック法律事務所で司法アクセスが困難な高齢者・障がい者の案件に取り組む。平成24年に法テラス東京法律事務所に所属。社会福祉士・精神保健福祉士。

編集協力:日本司法支援センター(法テラス)、独立行政法人国民生活センター、 新宿区福祉部高齢者支援課(新宿区役所高齢者総合相談センター)、 悪質商法評論家 多田文明、武蔵野大学教授 佐藤佳弘

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