【人気FP横山光昭さんが診断】まずローンと保険を軸に、家計管理を見直そう。
撮影・千葉 諭 文・大澤はつ江
やみくもに節約するのではなく、必要なものを把握することから始めよう。
住宅ローン
毎月の支出の中で大きな比重を占める住宅ローン。大場さんも8年前に都内に戸建てを35年ローンで購入した。
住宅ローンの返済額の理想的な割合は、一般的には手取り月収の25%。大場さんはズバリ理想的な数値だった。
「自営業なので会社員の方のようにボーナス時に返済金を多くすることができません。その分を毎月の返済に組み込んでいます。もう少し金額が少ないと楽なんですが」(大場さん)
住宅ローンの返済負担を軽減するには繰り上げ返済をするといいといわれるが、大場さんのように毎月同じ収入が見込めない場合はリスクが大きい。
「繰り上げ返済には『期間短縮型』(返済期間が短くなる)と『返済額軽減型』(毎月の返済額が少なくなる)の2種類があります。期間短縮型を早いうちに行うほうが利息軽減効果が高くメリットがあるのは事実です。ローンを組んだ当初の数年間は、元金にかかる利息部分の返済をしているので、元金部分が少なくなれば利息部分も減ります」(横山さん)
ただし、元金の返済は手持ちの現金で行うので、貯金が減ることを認識しなければいけない。
「子どもの教育費にお金がかかる期間や、最長10年間の『住宅ローン控除』を利用できる間は繰り上げ返済を焦らないほうがいいですよ」(横山さん)
住宅ローン控除は年末時点で住宅ローン残高の1%が税金から控除される制度で、残高が多いほど控除額が大きくなる。逆に繰り上げ返済などで残高が少なくなると控除額も減り、メリットが得られない。
「このほかにローンの借り換えも視野に入れるといいですよ。現在、金利は少しずつ上がってはいますが、比較的低い時代ですから、安い金利で借り直せれば、支払いの負担が軽減されます」(横山さん)
ただ、初回の借入時より年収が下がると審査などで借り換えが難しい場合があるので、タイミングが重要だ。
「借り換えは7年前に行いました。住宅ローン控除も適用期間がまだあるので申請をしています」(大場さん)
「よい選択ですね。ご主人は定年退職がない分、収入を得られる期間が長いというメリットがあります。住宅ローン控除期間内にコツコツと貯金をして、返済に回せそうになったら繰り上げ返済を考えるといいと思います」(横山さん)
「わかりました。まずは貯金が大切なんですね。コツコツとがんばります」(大場さん)
ローンの返済は、預貯金とのバランスを見て繰り上げるか否かを判断し、やみくもに行わない。特に親の介護問題、家族の病気など、40代以降は予期せぬ出費が多くなりがちだ。そんなときにあわてないためも、住宅ローン控除や借り換えを選択肢に入れながら熟考して、家計に影響しない余剰金で行うといい。
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