作家の楊逸さんが郷愁を感じる、懐かしい故郷ハルビンのおやつ。
ちょっとつまめば心も身体もほぐれていく。そんなおやつを楽しむ時間があるのって幸せ。中国黒竜江省ハルビン出身の作家・楊 逸(ヤン・イー)さんに、「故郷の味」を教えてもらいました。
撮影・清水朝子
幼い頃のおやつは、つい手にとってしまう。
日本在住が約30年になる作家の楊逸さん。いわゆる「故郷の味」も時折食べたくなるもののひとつ。このところ毎年故郷ハルビンに帰る機会があり、郷愁に駆られて買ったのが、内モンゴルの特産品・奶片(ナイピュア、練乳を乾燥させたようなもの)や松の実、幼い頃のおやつ氷糖葫蘆(ピンタンフーロー、飴で覆ったサンザシを串に刺したお菓子)をスナックにした糖萌芦(タンホール)など。
「糖萌芦はごま味とバラ味。食べ比べてもあまり差はないですけどね(笑)。幼い頃は氷糖葫蘆や涼糕(リャンガオ、小豆餅)を売る物売りの声が、夕方になると通りから聞こえてきたものでした」
母がその声に反応し、財布に手をかけることを期待して、視線を母の手から離せなかった、甘酸っぱい思い出のおやつ。そのせいか見かけるとつい懐かしく買ってしまう。松の実も、山奥に住む親戚がお土産でくれた懐郷の味。
「日本だと高いでしょう? 松の実も塩気がないそのままが子どもの頃から好きなんです。料理にも使えるし」
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