『脱「若見え」の呪い “素敵なおばさま” のススメ』地曳いく子さん|本を読んで、会いたくなって。
おばさん、と呼ばれて怒るのは40まで。
撮影・中島慶子
『服を買うなら、捨てなさい』『50歳、おしゃれ元年。』などファッションと生き方を見つめる著書がロングセラーを続ける地曳いく子さん。最新作のテーマは “素敵なおばさま” 。具体的には、フランスのマクロン大統領夫人のブリジットさんに見る64歳でも飾らない美しさで魅了する女性と、タイで捕まった62歳ながら38歳と偽ってショートパンツにカチューシャなどイタいファッションを続けた自称エリコさんとの比較を背景に、日本に蔓延する “若見え” を望む女性に警鐘を鳴らす。
「私は最近 “おばさん” と呼ばれるとすごくありがたいんです。だってもう若い子と張り合わなくていいと認められたわけですから。おばあちゃんと呼ばれないだけいいなと。でも、そのときに年齢と格好がかけ離れているのは気持ち悪いですよね。ブリジットさんを見たときに『かっこいい老け感』があるなと思ったんです」
本書で取り上げている世代はちょうど “バブル” を体験してきた女性たち。地曳さんは取材した7人の女性のファッション履歴を例に、「経年美化」を目指すうえでの着こなしを説いていく。
「若い頃に似合っていた服が手を出せなくなっている年齢や体形なのに『昔の自分で着ています』という感じで、アップデートができていないのがいちばんの恐怖ですよね。今はハイブランドがファストファッションと組んで服を作ったり、昔と比べておしゃれをするうえでもすごく敷居が低くなっています。バブル世代こそ、あの頃持っていたフォース(力)を生かして、いろいろな服を試してほしいですね」
「今着ているこの服もユニクロUですよ」と話す地曳さん。
「バブル世代から話を聞いていちばん思ったのは、今の若い女性と比べて誰もが普通のようで普通じゃないファッション体験をしていらっしゃる(笑)。それをどう生かすかだと思うんです」
ワイドパンツは七難隠す、下着と靴はアップデートすべし。おしゃれな服は混ぜて(一緒に)着るな、といった地曳さん流のこの世代に向けたリアリティのあるアドバイスとともに、読むほどに素敵なおばさま像が見えてくる。
「今は高い服を買ったからといって安心できる時代ではないので、目標とするところは、いつまでも明るく元気にいられるスタイル。そうすればきっと、自分の立ち位置がわかってくるんじゃないでしょうか」
マガジンハウス 1,200円
『クロワッサン』963号より
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