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どんな食べ物も受け止める、森の生命力をたたえた木の器。

かつてその枝を風にそよがせていたときの記憶を宿しているかのような木の器。命をつなぐ日々の糧をおおらかに受け入れてくれる。

撮影・尾嶝 太 文・一澤ひらり

ごはんの水分をほどよく吸い取る天然木は、飯台として最適。

きめ細かで美しい樫のボウル。ごはんの粗熱や余分な湿気を吸収するので、飯台としても役立つ。この日遊びに…

きめ細かで美しい樫のボウル。ごはんの粗熱や余分な湿気を吸収するので、飯台としても役立つ。この日遊びにきた須田さんの長年の友人、生活雑貨店『ミゴラボ』を営む石黒美穂子さんが華やかなちらし寿司を作ってくれた。
「少し深めで混ぜやすいですね。私が器に目覚めたきっかけは須田さんの木の器で、20枚近く持っています。薄手で扱いやすく、使い込むうちに味わい深くなっていくのも魅力です」(石黒さん)

どんな食べ物も受け止める、森の生命力をたたえた木の器。

木椀は保温力優秀。見た目も中身も温かい。

味噌汁だけでなく、ポタージュなど和洋を選ばずに使える小ぶりの椀。滑らかな木肌で持ちやすく手にしっくり…

味噌汁だけでなく、ポタージュなど和洋を選ばずに使える小ぶりの椀。滑らかな木肌で持ちやすく手にしっくりなじむ。木椀はやさしい風合いの桜、スプーンは楢の木で作られている。
「スープには口当たりの柔らかい木のスプーンが一番です。金属製のものより味がまろやかになって断然おいしいですよ」(須田さん)

素朴なプレートは、季節のフルーツを盛っても野趣満点。

岩手県産のくるみの木で作られたきれいな木目のプレート。季節のフルーツを盛るだけでも絵になるが、前菜を…

岩手県産のくるみの木で作られたきれいな木目のプレート。季節のフルーツを盛るだけでも絵になるが、前菜を盛り合わせたり、デザート皿にしたりと用途が広く、1枚あると重宝する。
「シンプルなプレートには料理を受け止めてくれる自然のおおらかさがありますよね」(須田さん)

カレーの色が染みても、それが深みになる。経年変化の楽しみも。

「色移りが心配で、カレー皿には使えないと思われがちですが、オリーブ油で仕上げているので油ものとも相性…

「色移りが心配で、カレー皿には使えないと思われがちですが、オリーブ油で仕上げているので油ものとも相性がいい」(須田さん)
写真上の明るい色のプレートはアメリカンチェリー、下はアメリカンウォルナット。材質によって風合いの違いも楽しめる。須田家の定番チキンカレーはいつも木皿で。妻の牧子さんによれば、
「においはつかないし、色が少し染みても器に表情が増していきます」

余分な水分を逃してこんがりトーストの食感を引き立てる。

天然木の木皿の包容力は絶大だ。外はカリッと、中はモチッと、焼きたてパンやトーストのおいしさを、無垢の…

天然木の木皿の包容力は絶大だ。外はカリッと、中はモチッと、焼きたてパンやトーストのおいしさを、無垢の木肌が最大限キープしてくれる。理想のパン皿だ。
「ウレタン塗装などを施さず、オリーブ油を塗っただけの仕上げなので、除湿性、保温性に優れているんです。ピザをのせてもいいですね。木肌がカサついてきたら、植物油を塗ると息を吹き返してくれますよ」(須田さん)

使い込むほどに愛着が湧いてくるカトラリーたち。

「スプーンやフォークなどのカトラリーは家具の端材を譲ってもらって作ったものです。タモ、カエデなど素材…

「スプーンやフォークなどのカトラリーは家具の端材を譲ってもらって作ったものです。タモ、カエデなど素材はさまざま。形もサイズも微妙に違っているんです」
と須田さん。パスタフォーク、薬味用のさじなど、細部に実用的な工夫が施されている。
「料理研究家やスタイリストの方たちからアドバイスを受けて、試行錯誤しながら作ってきたので、とても使いやすいと思います」

須田二郎●木工作家。若いときに世界各地を放浪。その後農業や林業に携わり、日本の雑木林を再生したいと20年前から東京・八王子で木工に携わる。「西多摩自然フォーラム」で森林ボランティアの活動も。2017年11月22日より吉祥寺『アウトバウンド』で個展開催の予定。

『クロワッサン』959号より

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