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夫のがんを一緒に乗り越えた林 恵子さん。「大切なのは細胞が元気になる生活習慣」。

2008年、夫が食道がんと診断された林恵子さん。どうやって一緒に克服したのか。当時を振り返ります。
林恵子さん。がん患者と家族の交流の場「てんとうむしカフェ」にて。
林恵子さん。がん患者と家族の交流の場「てんとうむしカフェ」にて。

ひとりで病院に行った夫にがんと告げられた時は、少し怒りにも似た反応をしてしまったという。

「がんのことはまったく頭になくて、人一倍健康に気をつけてきた一番身近な夫が『なぜ?』という感じでした」

夫の、頻繁に引く風邪や更年期障害、花粉症を日々の食事の工夫でなんとか克服させた自負があった。がん治療中も、林・恵子さんはやはり徹底的に調べ、主に食事の力で治療をサポートする。手術、放射線治療の後、抗がん剤治療の副作用で便秘や倦怠感、口じゅうに口内炎ができ、食べることも話すこともできなくなった夫が「もう抗がん剤をやめます」と宣言した後は、林さんのケアはさらに多岐にわたった。

本や知人からさまざまな情報を集めた林さんは日々の栄養バランスを記録。食事療法はもちろん、漢方を処方してもらったり、こんにゃく温湿布を続けたり。良い足もみ療法院を探し、マッサージを受けるだけではなく家でもできるように技術を習得するなど。さぞや大変だったと思うが、「尽くすタイプというより、健康好きなんです(笑)。がんが広がらないように、夫が続けやすいようにと無我夢中でなんとかしようとしていました」

そして意外なのは「がんとは闘わない」というポリシー。

「がんも自分の細胞ですから。不良になったがん細胞〝がんちゃん〟にも愛情を持って接して、更生してもらうのが良いのではと考えました」

そのためにいちばん大切なのは、栄養バランスのとれた食生活を継続することではないかと林さんは言う。

「例えば高価な健康食品より毎日のスムージーやバランスの良い食事、温熱療法の代わりに温湿布やときどき温泉。お金をかけずに手間をかける。無理せずやれることを家族で続けて習慣にすることが、大事だと思うんです」

試行錯誤を続けた7カ月後、医師からリンパに転移したがんが「映ってませんよ」と告げられる。

もちろん、林さんの例はすべての人に当てはまることではない。情報収集の大切さを知った林さんはその経験を本にまとめ、一昨年からは「てんとうむしカフェ」という患者さんやその家族との交流の場を設け、情報交換している。

『クロワッサン』956号より

●林 恵子さん 夫が2008年食道がんと診断される。標準治療後、自宅でのケアに取り組む。写真はある日の「てんとうむしカフェ」の様子。詳細は林さんのブログhttp://gancyan.exblog.jp/で。

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