【前編】家は狭くても広く暮らす人、その秘訣は?
撮影・青木和義 文・板倉ミキコ
遊び盛りの小学生と、保育園に通う息子二人を持つ吉川永里子さんにとって、今住む52平米の賃貸マンションは、決して広くはない空間。でも、共働きの吉川家にとって、家選びの大切な条件は「保育園の通いやすさ」だった。
「この部屋は間取りも理想的でした。2LDKで、6帖、6帖、12帖の四角い部屋が並ぶ単純な間取りは、模様替えをすればフレキシブルに使えます。廊下がなくワンフロアでコンパクトだから、子どもがどこで何をしているのかが見渡せ、むしろ今の我が家にちょうどいいサイズだと思ったんです」
収納スペースが豊富ではなくても、上手に工夫することで無駄なく合理的に暮らせてしまうのが、収納スタイリストの吉川さんの腕の見せ所。今回も、家族の行動をベースに、大人から子どもまで使いやすく、ラクに物を片付けられるシステムを考えた。
「自分が使いやすいだけではなく、夫や子どもも片付けに参加できるよう、共有の物はみんなが出し入れしやすい位置と収納を心がけ、ラベリングもわかりやすくしています」
また、子どものための家にしないことも鉄則。衣食住が充実するレイアウトを考え、ゆとりの空間を確保したのが現在の姿。リビングスペースは、やんちゃな男の子が二人いるとは思えない、大人がくつろげる落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「ソファは、つい最近買ったばかりんです。それまで、部屋が狭くなるし、子どもの遊び場所になってしまうだけだと思い、買い控えていました。でも、下の子もだいぶ成長したし、ちゃんとソファとしての機能が果たせるな、と判断。部屋に圧迫感を与えない、奥行きのないものを選び、今まで以上にくつろげる空間になりました」
家具のレイアウトや収納方法は、 常に柔軟に変化していくもの。
現在子ども部屋のスペースは、以前は家族全員の共有空間だったが、長男が小学校に入ったのを機に変更。それに合わせ、リビングの収納も変えた。
「子どもの成長、ライフステージとともに、暮らしは変化していきます。必要な物も変わるし、行動も変わる。間取りがアレンジできるのも大切ですが、収納にもその変化に対応できるほど、柔軟性があるかが大事。例えば、立派な婚礼ダンスがあるより、組み替えて使えたり、洋服以外の物も入れられるプラスチックの衣装ケースのほうが、臨機応変に活躍してくれる場合もあります。私がいつも心がけているのは、ラクするための片付けを徹底して、限られた空間で家族全員が快適に暮らせるかどうか。暮らしはどんどん変わっていくけど、その変化の波をなるべく小さな労力で越えられるよう、しなやかでシンプルな収納を常に考えています」
家族も片付けに参加してくれる、快適な暮らし方のコツとは?
カウンターは、キッチンの幅や収納したい物のサイズに合わせたオーダーメイド。ウォーターサーバーの本体を隠せ、ストックの水も置ける。レンジや炊飯器なども入れ、目隠しにもなったので、ダイニングからの眺めがとてもスッキリした。
収納家具は、持ち物の変化に合わせられるものを、なるべく揃えて選ぶのが効率的。そこで吉川さんが選んだのが、物が見渡せるオープン棚。可動性があり、後からも買い足しができ、入れる物に応じた使いやすい奥行きかが選ぶポイントに。
後編はこちら >>
【後編】家は狭くても広く暮らす人、その秘訣は?
『クロワッサン』951号より
●吉川永里子さん 収納スタイリスト/近著に『あなたもつかめる! もう探さない人生』(主婦の友社)。
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