鮭とともに生きる町・村上を訪ねる。きらきら羽越観光圏の旅<3>
文・斎藤理子
塩引鮭を作る材料は、厳選した最上級の鮭と天然の粗塩のみ。熟練の職人によって1尾1尾丁寧に塩をまぶされた鮭は、まず樽に漬け込まれます。塩が馴染んだところで一度水洗いして余分な塩を落としたら、それを梁に吊るし、北西の冷たい風にあて3〜4週間ほどじっくりと干します。この間に水分がゆっくりと飛び、発酵と熟成をしながら旨味を凝縮させていくわけです。村上の低温多湿な気候と蔵つきの天然菌がなくてはできない、「千年鮭きっかわ」ならではの、独特の滋味です。
風を通すために窓は1年中開けっ放しだそうなので、冬はさぞや過酷な住環境だと思いますが、美味しい塩引鮭のためなら寒さもまったくいとわないと店主。もちろん今も化学調味料や添加物は一切使わず、鮭を自然に醸すという先人の知恵が生んだ食文化を守り続けています。
この「千年鮭きっかわ」の周辺には、伝統的な家屋である町家が点在しています。一般に公開しているところも多いので、散策ポイントのひとつにもなっています。
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