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赤城明登さんが案内する、故郷・倉敷の大原美術館。

国内で初めて西洋美術・近代美術を紹介する本格的な施設として生まれた『大原美術館』。その魅力を塗師の赤木明登さんに紹介してもらいました。

撮影・三東サイ 文・野路千晶

倉敷川に架かる今橋の先にある大原美術館は、威 厳ある佇まいと建物を取り囲む緑が目印。
倉敷川に架かる今橋の先にある大原美術館は、威 厳ある佇まいと建物を取り囲む緑が目印。

川沿いに続く柳並木、江戸時代より残る白壁の屋敷や蔵など、歴史と風情を感じる景観が人気の岡山県・倉敷美観地区。国の重要伝統的建造物群保存地区としても指定されるこの町並みの一角に「大原美術館」はある。

1930年、国内で初めて西洋美術・近代美術を紹介する本格的な施設として生まれた同館の創設者は、市内屈指の実業家であった大原孫三郎。ギリシャの神殿を思わせる本館の荘厳な外観は、美観地区のランドマークのひとつでもある。

物心ついた頃より大原美術館を訪れていたというのは、倉敷の隣町で生まれ育った赤木明登さん。現在でも、塗師としての活動拠点の石川県輪島市から岡山へと帰省するたび、定点観測的にこちらに足を運んでいるそう。

「馴染み深い美術館なので、近所を散歩しているような感覚で敷地内全体をブラブラと歩いています」

本館の展示室には、フランス印象派の作品 のほか、欧米の現代美術の常設展も。
本館の展示室には、フランス印象派の作品 のほか、欧米の現代美術の常設展も。

同館が所蔵するコレクションの中核をなすのは、孫三郎がその才能を高く評価し、友人でもあった岡山県出身の洋画家、児島虎次郎がヨーロッパで買い付けた作品の数々。バルビゾン派、印象派、ポスト印象派といった各潮流を代表する西洋画家たちの名画に加え、中国、エジプト美術の収集にも尽力したという。その後を継いで同館が購入した古美術や彫刻、工芸作品、現代美術など含めた現在のコレクション総数は約3000点にものぼり、中国地方の私設美術館においては最大規模。他の美術館でも大原美術館の所蔵品をテーマにした企画展が開催されるほど、多くの美術愛好家を魅了してきた作品揃いとして名高い。

「ホールを飾るエル・グレコはもちろん素晴らしいけれど、日本の近代絵画も名作ばかりで見ごたえがあります」

そう請け合う赤木さんが、訪れたら必ず観たい所蔵作品としてあげたのは『里の水車』。明治41年より約5年間、孫三郎の後援のもとヨーロッパへ拠点を移した児島虎次郎が渡欧前に手がけた作品だ。農作業中に子どもに授乳する母の姿が真摯に写実的に表現され、ベルギー印象派の画風を追求する前の虎次郎の力強い筆致が新鮮に映る。

『里の水車』 児島虎次郎1906年
『里の水車』 児島虎次郎1906年

おすすめは絵画だけではない。濱田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉、河井寛次郎らによる陶芸作品や棟方志功の木板画、東洋の古代美術品が展示された、工芸・東洋館も楽しみのひとつ。大原家の米蔵であった空間を、染色家の芹沢銈介が総合プロデュースして1961年から順次誕生した隣接するオリエント室では、虎次郎が収集した古代エジプト美術や中世イスラム美術を観覧できる。

「オリエント室は、ふだん目にすることのないような貴重で珍しい美術作品ばかり。顔ぶれが大変おもしろく、気に入っています」

全館を通すと約1500点もの作品と出合える圧倒的なスケール。古今東西、多彩なつくり手が追求してきた美のエネルギーに触れてみたい。

コの字型に設計された工芸・東洋館の外観。内装や展示ケースは、すべて芹沢銈介のデザイン。
コの字型に設計された工芸・東洋館の外観。内装や展示ケースは、すべて芹沢銈介のデザイン。

大原美術館 岡山県倉敷市中央1・1・15 ☎︎086・422・0005 9時~17時(入館は閉館の30分前まで) 月曜(祝日の場合は開館、7月下旬~8月、10月は無休)、年末休館 入館料(本館、分館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館を含む)・一般1,300円、大学800円、小学・中学・高校500円 http://www.ohara.or.jp

『クロワッサン』935号より

●赤木明登さん 塗師/編集者を経て輪島塗の職人のもとで修業後、独立。能登の工房で漆の器などを制作する。全国各地で開催される個展はいつも人気。

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