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高原の森と光の中で体感する美しい色彩を堪能。「ポーラ美術館」へ。

審美眼に定評あるガーデンデザイナーの吉谷桂子さんがおすすめする「ポーラ美術館」。施設の魅力と好きな作品を教えてもらいました。

撮影・清水朝子 文・野路千晶

彫刻家、青木野枝による屋外彫刻 『雲谷/仙石原』2013年(一部)。
彫刻家、青木野枝による屋外彫刻 『雲谷/仙石原』2013年(一部)。

箱根仙石原の自然の中に佇み、光の降り注ぐ開放感あふれる空間が特徴の「ポーラ美術館」。ここは「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに2002年に誕生した。森の中の細く長いアプローチブリッジを渡り、ガラス張りのエントランスホールを抜けると、地下2階まで吹き抜ける広々としたスペースが目に入る。ガーデンデザイナーの吉谷桂子さんがこの美術館を初めて訪れたのはおよそ7年前。ほど近い「星の王子さまミュージアム 箱根サン=テグジュペリ」の庭のデザインを手がけることになり(現在も継続中)、箱根を頻繁に訪れるようになったことがきっかけだった。

「色彩豊かな所蔵作品はもちろん、環境のすばらしさに驚きました。一足遅い新緑を望める初夏の眺めは特に美しくて、最高。ぜひ訪れてほしいです」

ガラスが多用され、自然と一体化した館内へと続くエントラン スホール。屋根の向こうには青く広い空と小塚山の緑が見える。
ガラスが多用され、自然と一体化した館内へと続くエントラン スホール。屋根の向こうには青く広い空と小塚山の緑が見える。

年に2度、展示替えの行われる常設展と企画展では、約1万点のコレクションから300〜400点の作品を抽出して紹介している。実は、その収蔵作品には、吉谷さんの大好きな画家ベスト5が揃っているという。中でもあえて1点を選ぶとしたらと聞くと、20世紀を代表する芸術家のひとり、パブロ・ピカソが息子のパウロを描いた『花束を持つピエロに扮したパウロ』をあげてくれた。どこか静かで大人びた眼差しを持つ少年は、鮮やかに彩られたパレットのような花束、絵筆を思わせる杖を持ち、ピカソが自らの姿を投影したとも言われている。ポーラグループの元オーナーで、ここのコレクションの持ち主であった鈴木常司氏が生前、最後に購入した作品だという逸話も。

「観たあとに、少しだけ物悲しい気持ちになる。それほど心に残るんです」

森を渡るアプローチブリッジ。下に は緑の茂る「風の遊ぶ散歩道」が。
森を渡るアプローチブリッジ。下に は緑の茂る「風の遊ぶ散歩道」が。

次に、ピエール・オーギュスト・ルノワールとクロード・モネ。日本有数の西洋画コレクションの中でも特に人気だという印象派の画家だ。吉谷さんは、年々その良さを実感するようになってきたそう。

「特にルノワールの描く肌、緑、花の色。そして、そのリフレクション(反射光)の表現。黒や墨色を使用せずに影を描き出し、光線を感じさせる色彩表現はお見事。人物画だけでなく、風景画や静物画もすべて、魂がとろけるような甘美がありますよね」

(左)『水浴の女』ピエール・オーギュスト・ルノワール1887年、(右)『睡蓮の池』 クロード・モネ1899年
(左)『水浴の女』ピエール・オーギュスト・ルノワール1887年、(右)『睡蓮の池』 クロード・モネ1899年

『クロワッサン』935号より

●吉谷桂子さん ガーデンデザイナー/7年間のイギリス生活を経て、園芸関係のデザイン、著作を手がける。ファッションブランド「シェイド ヨシヤ ケイコ」ではデザインと機能性を両立する大人のスタイルを提案。

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