『感情労働の未来 脳はなぜ他者の“見えない心”を推しはかるのか?』恩蔵絢子 著──自分の本来の感情はいったいどこにあるのか
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
日除けや冷え対策にも便利なシアーカーディガン
コットン100%で軽くて涼しい素材ながら、日差しや冷房の冷えからもしっかり守ってくれるカーディガン。これから暑くなる季節に持っておきたい、心強い1枚です。
刊行されたのは昨年だが、評判になっているので読んでみた。「感情労働」とは1983年に社会学者のホックシールドが提唱した概念で、自分の本来の感情を抑えて顧客や企業が求めるように振舞う労働のことだ。たとえば接客業とか介護職とか。
クレーマーに対し、内心腹が立っていても表層的には丁寧に接する人もいれば、なにか事情があるのだろうと深層部分でも相手に感情を寄せようとする人もいる。前者はいつしか仕事から自分が「疎外」されていると感じる可能性があり、後者は「燃え尽き症候群」になりうるという(雑な要約なので、詳しくは本文にあたってください)。自分の職種は感情労働ではないという人でも、家庭や友人同士といった私的な領域での「感情作業」は経験があるはず。
感情の経路の2パターンや、AIと感情について、認知的不協和のこと、感情的知性の自己チェックなど、内容は盛りだくさん。こうした脳科学について知り、自分の感情の動きをメタ的に見る視点を持つことは、心の整理に役立つと思う。“理性”や“知性”のほうが重んじられるイメージがあるが、“感情”を蔑ろにしてはいけないとつくづく感じさせられた。
『クロワッサン』1164号より
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