創業大正十五年 蓼科 親湯温泉──モデルKIKIさんがナビゲート「大人好みの山の自由時間を楽しむホテル」
撮影・柳原久子 構成&文・堀越和幸
「登山に行けない時でも、オフは山の近くで過ごしたい」
KIKI(きき)さん モデル。モデルのほか、女優、写真家としても活躍。登山、建築、写真などをテーマにしたエッセイを執筆。著書に『美しい山を旅して』が。
モデルのKIKIさんは登山が趣味だ。登り始めて19年、多い時は年間50日以上も入山していたが、結婚と出産を経て、現在はそのペースは落ち着いている。そんなKIKIさんに、今回は登らなくとも山を満喫できる素敵なホテルを2軒紹介してもらった。(登らなくとも満喫できるが、“山のホテル”だからもちろん登ることだって可能だ)
1軒目は、長野県は蓼科にある『創業大正十五年 蓼科 親湯温泉』。
本を読んで散策に出かける、大人好みの山の自由時間
「近くの八ヶ岳はしょっちゅう来ていたのですが、今はまだ子どもが小さくて登山はできません。で、なるべく山の近くで過ごしたいと考えたときにたまたまこちらを発見して、家族で泊まりにきました」(KIKIさん)
JR中央本線「茅野」駅で降り、送迎バスに揺られること30分、標高1350メートルの地にこのホテルはある。目の前には滝の湯川の急流が流れていて、バスを降りるとたちまち足下から渓谷の轟きが立ち上ってくる。胸に吸い込む空気は湿った土の匂いがひんやり涼しい。
「このホテルは昭和初期の映画監督、小津安二郎さんのお気に入りの宿だったそうです。館内には小津監督の古い写真や愛用品が飾られていて、またフロント奥の広いラウンジには、膨大な本のライブラリーがあって、これが素晴らしい」
ホテルのマーケティングチーム・酒井典子さんによれば、この〈みすずラウンジ〉の蔵書はおよそ3万5000冊で、2019年に行われた全館リニューアルを機に集めたそう。国内外の古典から現代文学、思想書、哲学本、写真集……と、壁を埋め尽くす背表紙に圧倒される。
本を部屋に持ち込んで時間を忘れて過ごすのもいいが、天気が晴れたらぜひ外に出かけよう。渓谷の岩場の道を下っていくと、そこは苔が豊かな原生林の別世界、歩くこと数分で、蓼科大滝が現れる。
「ちょっとした散策にちょうどいいです。滝のマイナスイオンを浴びながら渓流のせせらぎに身を任せれば、自然と一体になれる気がします」
大正15年に創業、来年は100周年を迎える老舗ホテル。部屋数は全館で合計52室あり、大人2名1泊2食付きで1名あたり2万2000円〜。30日前までに申し込むと早割プランも利用可能。
『クロワッサン』1148号より
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