男性ブランコが語る舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』──役者の方々とのお芝居を通して発見したこと
撮影・高橋マナミ 文・兵藤育子
平井さん「見てもらってなんぼなので、あらゆる手段を講じます」
浦井さん「嫌らしい言い方ですけど、コントはコスパがいいんです」
2021年、キングオブコント準優勝で一気に注目を集め、翌年にはМ-1グランプリのファイナリストに。男性ブランコの大きな武器といえるのが演技力だ。現在、ヨーロッパ企画・上田誠さん脚本/演出の舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』に出演した。二人の出会いは大学のインカレ演劇サークルだそうで……。
──そもそもなぜ演劇サークルに?
平井まさあきさん(以下、平井) 僕は当時から芸人になりたかったので、落研とかお笑いサークルがあったらそっちに入ったとは思うんですが、新歓のお祭りで演劇サークルのコントをたまたま見て入りました。でもそこから“大王”こと後藤ひろひとさんや、ヨーロッパ企画さんなど演劇の面白さに目覚めましたね。
浦井のりひろさん(以下、浦井) 僕は役者にうっすら憧れがあったからなのですが、入ってみて逆にお芝居の大変さを思い知りまして。最初の本公演で、いきなり主役をやらせてもらったんです。家族に逃げられたお父さんの役なんですけど。
平井 18歳にして、哀愁が出すぎていたんです(笑)。
浦井 稽古に2カ月間かかりきりになり、疲れ果ててしまって。1年で辞めて、コント公演のときだけ戻って平井たちと一緒にコントをやっていました。結局、人前で何かするのが好きなのだとわかり、バランス的にちょうどいいのがコントだという結論に。1週間くらいの稽古で人前にパッと出て、笑ってもらえる。ほんと、嫌らしい言い方ですけど、コントはコスパがいいんですよ(笑)。
平井 学生演劇だったので、授業がおろそかになるくらい自分たちで全部準備をして、蓋を開けたらお客さんが3、4人だったりして。あの光景は目に焼き付いていますね。やりたいことをやったから、観客が少なくても気にしないっていうふうにはまったく思えなかったし、見てもらってなんぼだと。そのために、あらゆる手段を講じるようになりました。
浦井 今に通じる、根っこの価値観になっています。
──『リプリー、あいにくの宇宙ね』は、宇宙船の中で次々と起こるトラブルに対処するSFコメディだそうですが、それぞれどんな役を?
浦井 自分よりも古い型のロボットと、彼をわかりやすくロボット扱いする人間の間に立って仲裁する、中間管理ロボみたいな役どころです。
平井 僕は科学者の役です。上田さんほどじゃないにしろ、宇宙とかエイリアンとかが好きなので、興味の範囲が役柄に近いですね。
──役者の方々とのお芝居を通して、発見することはありますか?
平井 稽古で即興のエチュードをやったとき、僕らは割とあっさり素に戻ってしまうんですけど、役者さんはずっと役のままでいられるんです。僕の場合だったら、科学者はこんな言い方をしないだろうけど、つい素の僕としてツッコんでしまう。
浦井 面白いことに反応したい欲が勝ってしまうんですよね。僕も何度かそれをやったら、上田さんに「浦井さんってツッコミだったんですね!?」って言われました。最近、けっこう仕事をご一緒してるのに、気づいていなかったみたいです(笑)。
──お芝居の経験によって、コントもまた変わっていきそうですね。
浦井 どのトーンで話すのが面白いのかなど、コントでは割と大雑把にやってましたが、照準の定め方をより細かく考えるようにはなりました。
平井 昔は全然ウケなかったネタを掘り起こして、今やったら違うかもしれないと期待はしてしまいます。
──トラブルがどんどん降りかかる今回の演劇にかけて、コント中にあったトラブルを教えてください!
平井 単独ライブの前にみんなでカレーを食べたら、会場がカレーのにおいで充満してしまって……。
浦井 地下で、換気も効かなくて。
平井 別にカレーの題材とか一切出てこないんですけど、演出か何かだと思われて。終わった後、お客さんに「カレー食べたくなりました」ってめっちゃ言われました(笑)。
https://x.gd/P5OhS
※販売は6/29(日)12:00まで
※見逃し視聴は6/29(日)23:59まで
『クロワッサン』1141号より
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