『くらべて、けみして 校閲部の九重さん 2』こいしゆうか 著──校閲の面白さと働くことのリアル
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
出版社の校閲部を舞台にしたコミック。第一弾がめちゃくちゃ面白かったので第二弾が出てうれしい。
小説の原稿の文章や単語、情報に誤りがないかをチェックするのが校閲の仕事。間違いやすい表現などの豆知識も盛り込まれていて勉強になるし、実際にあったおもしろエピソードもたっぷりで読んでいて楽しい。
この第二弾で印象に残るのは、仕事のスタイルや向き合い方。自分もいろんな校閲者と仕事をしているが、えんぴつ(疑問や指摘)の入れ方が人によってものすごく違うので、そのエピソードに「そうだよね!」という気持ち。
また、新作小説について「差別を助長する内容なのでは」と社外の校閲者から指摘があったエピソードはインパクトがあった。指摘は真っ当だと思ったが、社内の校閲者はまず、編集者や小説家に伝えるかどうかで悩む。伝えればいいのに、と最初は歯がゆく思っていたが、自分は彼らの立場的な葛藤をまったく考えていなかったと気づいて申し訳なくなった。また、その後まるくおさまる展開にほっとした。仕事の現場のリアルを味わうことができる、という側面からも堪能した。今後も続いていってほしいシリーズである。
『クロワッサン』1141号より
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