銀杏BOYZ・峯田和伸さんが語る、音楽は仕事で俳優は仕事でない理由
撮影・徳永 彩(KiKiinc) スタイリング・入山浩章 ヘア&メイク・嵯峨千陽 文・黒瀬朋子
熱烈なファンを持つ、唯一無二のバンド「銀杏BOYZ」の峯田和伸さん。俳優としても、土のにおいのするピュアな人物を演じさせたら右に出る者はないくらい独特な魅力を放つ。
最新作は『BAUS 映画から船出した映画館』。吉祥寺バウスシアターが生まれるまでの、街とカルチャーの歴史を辿るような物語で、3年前に逝去した青山真治監督が準備を進めていた映画だった。
「青山監督の作品に出られるなんてと喜んでいたら亡くなってしまい、甫木元空監督が引き継ぐ形で実現しました。青山イズムを残しながら甫木元監督の色もあり、参加できてよかったです」
峯田さんが演じたのは主人公の兄役。弟と共に故郷の青森を飛び出し、上京後は活動弁士として働いた人物。役のために活弁と三味線を猛特訓した。
「活弁は先生から厳しい指導を受けました(笑)。普段、セリフは散歩しながら覚えるんですけど、今回は夜中も営業しているサウナに入っては覚え、さらに公園に自転車で行って、ぶつぶつ言いながら何周もしていたら、お巡りさんに職務質問されてしまいました」
映画『アイデン&ティティ』で鮮烈なデビューを果たして20数年。同業者から嫉妬されるほど自然なお芝居ができるというのに、「俳優」と名乗る気はいまだにないという。
「作品に呼んでいただくのはうれしいし、お芝居も楽しい。でも、俳優は仕事という感覚がないんです。音楽は自分で全責任を負わないといけないので、仕事っぽいし、厳しくもなります。純度の高いものが作れない限り曲も出したくないので、時間がかかりますね」
少年性を失わない峯田さんに、年齢を重ねることについて尋ねてみた。
「僕は高校1年の4月の授業中、後ろの席の吉田くんからニルヴァーナを聴かせてもらって、教室全体が揺れたと感じるくらい衝撃を受けたんです。世界がまるで変わってしまった。先生にバレないように教科書を立てて、机に突っ伏してCDウォークマンでニルヴァーナを繰り返し聴いている。あの1993年で僕の時間は止まっています。バンドをやるのも映画に出るのも、あり得ないことが起きている、あの時に見た夢の中みたいな感覚なんです」
我を忘れ夢中になれる楽しいことで24時間を埋め尽くしたいと考えている。
「しがらみもありますけど、自分に必要のないものさえわかっていれば、日日楽しくいられると思うんですよね」
欲しいものしか欲しくない。潔い自分軸こそ、皆が憧れるゆえんなのだろう。
ジャケット2万4200円(放課後の思い出 TEL.090・8592・7117) Tシャツ4万4000円(LOSTBOY TOKYO TEL.080・7222・7859) その他、本人私物
『クロワッサン』1137号より
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