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考察『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』8話 瀬川(小芝風花)「重三にとって、わっちは女郎なんだね」蔦重(横浜流星)「けど、とりわけ幸せになってほしいと思ってるぜ」ああ!蔦重の「バ──カ!!」

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』 (NHK/日曜夜8:00〜)の主人公は、のちに江戸のメディア王と呼ばれた蔦屋重三郎(横浜流星)。8話「逆襲の『金々先生』」では、『吉原細見 籬乃花』の刊行と花の井(小芝風花)の瀬川襲名が吉原の集客に繋がり、蔦重の地本問屋の仲間入りも成功するかに見えましたが、世間の吉原への偏見が立ち塞がるのでした。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を振り返り、考察する連載第8回です。

文・ぬえ イラスト・南天 編集・アライユキコ

瀬川の花魁道中に瞠目

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』8話イメージイラスト/鶴屋を階段から叩き落す駿河屋たち忘八連合の痛快連携プレー。それにしても蔦重への瀬川の想いが切ない/南天
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』8話イメージイラスト/鶴屋を階段から叩き落す駿河屋たち忘八連合の痛快連携プレー。それにしても蔦重への瀬川の想いが切ない/南天

『吉原細見 籬乃花(まがきのはな)』と五代目瀬川襲名の相乗効果で、吉原には『一目千本』『雛形若菜』を刊行した時以上に人が詰めかけている。蔦重を後押しすべく気合を入れた瀬川の花魁道中に瞠目した。1話のそれも美しかったが(記事はこちら)、艶やかさ煌びやかさがなお増しているではないか。髪飾りも着物もより一層ゴージャスになった。大名跡を継ぐとなれば今まで通りの装いというわけにはいかない。花魁が装いを変えれば、付き従う禿と新造も合わせて仕立てる。花魁の襲名では夜具なども新調したという。以前、蔦重が唐丸(渡邉斗翔)に説明した通り、女郎の身の周り、禿と新造の着物も含めての費用は見世が出してくれるわけではない。女郎自身の借金に加算されるのだ。馴染みの旦那が出資してくれたのならいいが、瀬川が無理していたらどうしよう。気迫みなぎる彼女の表情に不安を覚える。

『籬乃花』が引き寄せた客層

「つたや」に「耕書堂」の暖簾が! 布一枚であっても、初めて蔦重が自分で背負うと決めた大事な看板である。商家の主としての第一歩だ。やったね、おめでとう!

自前の看板を背負った蔦重は、耕書堂の主として忘八らと同じ座敷での食事も許されることとなった。今まで廊下から話をしていたことを思うと、格上げ、仲間入りした感がある。
「吉原が自前の本屋を持てるなんて」と忘八連合も駿河屋の女将・ふじ(飯島直子)も、しみじみと蔦重の本屋設立を寿いだ。
電話もテレビもネットもないこの時代。個人的に出す手紙以外は、印刷物だけが遊郭・吉原と外の世界を繋ぐ蔦である。その繋ぐ役目を果たす印刷物、出版物を吉原側から江戸市中へと発信する者が生まれた──吉原者である忘八、女将たちの感慨はひとしおだろう。

しかし今までと違って客が大挙して押し寄せた吉原には問題が生じていた。五代目瀬川の大評判を聞きつけて来た者、瀬川には会わせてもらえないがせっかく来たのだからと他の女郎を指名する者。とにかく見世にも吉原全体にも客が溢れている。
一人の女郎が一夜に何人もの客を渡り歩くダブル、トリプルブッキングが多発していたのだ。これは「廻し」「掛け持ち」と呼ばれる、客を多くさばくための吉原の習わしである。金を払って、遅くても女郎が来てくれたら良いが、待たされたまま朝になることも珍しくなかった。これに文句を言うと遊び方を知らぬ野暮な奴と鼻で笑われる。

「上草履ばたばたばたとよそへ行き」(上草履を履いた女郎の足音が他の客の部屋に行く)
「待ちわびる耳に蛙の声ばかり」

こんな川柳が数多く残っているように、廻し、掛け持ちは実際によくあることだった。落語『五人廻し』では、女郎に待たされた4人の客が遊郭の若え衆(わけえし・男性従業員)にクレームを入れる様子が面白おかしく語られる。女郎を独り占めにしている金持ちが、他の4人分の揚げ代を出すから帰ってもらえという申し出に、女郎の「あちきにそのお金をくんなまし。このお金を主さんに差し上げんすから、他の4人と一緒に帰っておくんなまし」でサゲとなる。
待たされる客は焦れるだけで済むが、女郎の負担は相当なものだったろう。

恋しい新之助(井之脇海)が平賀源内(安田顕)に伴われて登楼したこの夜、掛け持ちでも逢いたがるうつせみ(小野花梨)の要望は無理もない。「間夫(まぶ/女郎の恋人)はつとめの憂さ晴らし」。彼女はひとときでも新之助と顔を合わせてやすらぎを得たかったのだろう、新之助は断ってしまったが。彼にとっても彼女はもうただの女郎ではないからこそ、掛け持ちに耐えられない。
その気持ちはわかるけどさあ! 忙しい今夜だからこそ逢ってやってよと、うつせみの代わりにブツブツ文句をたれてしまった。

明け方、ようやく寝入ったらしき客の隣で瀬川は苦しそうにうめき声を上げる。「めちゃくちゃしやがって」。夜具のまわりに散らばる、行為後を処理した紙の生々しさと、その数たるや……。瀬川は「強蔵(つよぞう)」の相手をしたのだ。強蔵とは精力絶倫、それだけではなく女郎に対してことさら支配的に、乱暴な性行為を強要する男を指す。
蔦重はそんな客を瀬川につけないでくれと松葉屋主人・半左衛門(正名僕蔵)と女将・いね(水野美紀)に訴えるが、ふたりはけんもほろろ。加えて、その訴えを聞きとがめた松の井(久保田紗友)からは「(強蔵の相手が)わっちなら構わぬと? うつせみなら構わぬと? 」と詰め寄られた。うつせみの首には絞められた痛々しい跡が。彼女にも酷い客がついてしまっている。
ちょいと、うつせみちゃん。ゆうべの客が次に来たらこっちに連れてきな! そいつの首を絞めあげてやるから連れてきな! 憤っても仕方ないが腹が立つ。クソ客が。

7話で蔦重は忘八たちに自分の作る細見で吉原を繁盛させて女郎たちに客を選ばせてやりたいと啖呵を切った(記事はこちら)。しかし実際には女郎たちが客を選べるはずもなく、儲けるチャンスを忘八らが逃すはずもない。大見世の松葉屋でさえ、こんなにも客層が悪化しているのである。吉原最下層である切見世女郎たちがどんな目に遭っているか想像したくもない。
『籬乃花』が女郎たちの上に数多の客を降り注いでしまっているのだ。
それでも瀬川は耐える。重三のために。

蔦重って商才はすごいけど、もしかして……

自分を助けてくれる瀬川にどうやったら報えるのかと模索する蔦重に、義兄の次郎兵衛(中村蒼)と蕎麦屋主人・半次郎(六平直政)は身請けか間夫ではないかと助言する。

蔦重「間夫かあ……いなそうだな、アイツ」

……蔦重って商才はすごいけど、もしかしてバカ……いや朴念仁なのかな? という考えがチラッと頭をよぎる。彼みずから平賀源内に語ったように、吉原で育つ男は女郎には死んでも手を出してはならぬという掟を叩き込まれる。恋慕の情を抹消されてしまうので、女郎である瀬川を恋愛対象としてとらえられないのは、まあわかる。しかし、瀬川が文字通り身を削ってでも自分の助太刀をしてくれるのを「幼馴染だから、吉原をなんとかしたいから」という理由だけだと思っているのなら、やはりかなり鈍いバカ、いや朴念仁ではないか。
平賀源内の「虚しい話だねえ」という、瀬川を慮った言葉が響く。

蔦重が万が一にも間夫とならないことは、瀬川もわかっている。だから彼女は、幼い頃に重三からもらった赤本(児童向書籍)『塩売文太物語』を手に、束の間でも心を癒すのだ。『塩売文太物語』は無理矢理金持ちの妻にされそうだった貧しい塩売の娘が、旅の商人と恋をして駆け落ちする。しかもその商人は実は都の貴族であった。めでたしめでたしという物語だ。
この恋物語の赤本に詰まった重三との思い出が、今の彼女を支えていると思うと切ない。

鳥山検校の粋な心遣い

心身ともに疲弊した瀬川に、新しい客がついた。その名も鳥山検校(とりやまけんぎょう/市原隼人)。
もともとは荘園や寺社の監督職であった検校が、盲人の役職最高位の呼称として定着したのはこのような逸話が元となっている。
盲目となり出家した仁明天皇(810年~850年)の皇子・人康(さねやす)親王は、自分と同じような盲人を集め、琵琶や音曲を教えた。親王の死後、親王の側近く仕えた盲人に朝廷が検校の官位を与えたのが始まりだという。彼らは剃髪し、琵琶を奏じる盲僧となった。経典や物語を語る僧もいて『平家物語』を語る琵琶法師がよく知られる。その後、室町幕府が認めた盲人による音曲、鍼灸などの職能集団である「当道座」(とうどうざ)が生まれ、江戸幕府は障碍者の経済的自立を図る意味で盲人たちに「当道座」に所属することを奨励した。

「当道座」には、検校、別当、勾当(こうとう)、座頭という階級がある。階級昇格のためには音曲と鍼灸の技能以外に金銭が必要となる傾向が強まり、その手段として、元禄の頃に幕府から金貸しの資格が与えられた。
えげつない高利貸しで巨万の富を得る盲人が現れたのが、この江戸中期だ。
瀬川つきの新造らの「盲(めしい)は威張るやつが多いから嫌い」、引手茶屋の女将・まさ(山下容莉枝)の「検校は盲の頂点に立つ御方」。これらの言葉には、こうした背景がある。
さて、瀬川を座敷に呼んだ鳥山検校は威張ることも通ぶることもなく、豪華なプレゼントを持参して振る舞うような男だった。塗箱を開けると、新作の本がどっさり。

鳥山検校「初会は花魁は座っておるだけ。さぞ退屈であろう。幸い儂は盲。気にせず皆で楽しむがよい」

こんなん惚れてまうやろ! この余裕、これぞ粋。鳥山検校の心遣いに応えようと、瀬川は贈られた本の音読を申し出る。こうした瀬川の気働きに、検校も五代目・瀬川の、名ばかりではない魅力に感じ入ったのではないか。
青本を手に取った瀬川は、版元(板元)印に目を見張る。鱗形屋(片岡愛之助)……さては地本問屋として復活したのだ。
復活の狼煙となったのは『金々先生栄華乃夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』。本作の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』のタイトルは、この作品が元となっている。

田舎から江戸に出てきた青年・金村屋金兵衛という貧しい青年が、大金持ちの金々先生となるが、手代の源四郎の悪だくみにハマって元の貧乏に逆戻り。しかしそれは、目黒不動尊門前の粟餅屋で粟餅が蒸しあがるまでに見た一睡の夢であったという物語。
若者が旅の宿で粟飯が炊けるまでに皇帝となり栄華を極める夢を見たという中国の古典に想を得た謡曲『邯鄲(かんたん)』のパロディである。
今の江戸で流行っているものや言葉をふんだんに盛り込み、同じく当時大量発生していた通人ぶった金々野郎を徹底的におちょくった内容で大評判。本嫌いの次郎兵衛も夢中にさせる面白さ、ライバルであるはずの蔦重も危機感を忘れて読みふけってしまうほど。

今週の尾美としのりは、この場面。次郎兵衛の回想の中で、目ばかり頭巾の男が取り押さえられている現場で次郎兵衛と一緒に笑っている。ストップモーションなので、今までで一番わかりやすい。

鱗形屋孫兵衛が戻ってきた、しかも地本問屋として新たに本を出した。それがバカ売れしている。地本問屋の席に空きができたから仲間に加えてほしいという蔦重の願いはどうなるのか。次郎兵衛だけでなく、瀬川は気が気でない。
そこへ、蔦重からいつもの九郎助稲荷境内へ呼出がかかった。

わっちは女郎なんだね

新刊の青本と鱗形屋復活について性急に問う瀬川を、蔦重は忘八連合に相談に乗ってもらっているから心配ないと諭す。忘八連合は海千山千の商売人だ。味方につけたら、こんなにも心強い存在はない。これまでの奮闘を思えばありがた山なのだが、瀬川の表情が曇る。

瀬川「吉原をなんとかしたいと思ってんのは、もうわっちら二人きりじゃないってことだね」

瀬川は、蔦重とふたりで力を合わせることに甲斐を感じていたのだろう。「重三のためになるのだ、喜ばねば」と、明るく笑おうとする瀬川に、蔦重が「今までお前が助けてくれたから」と礼と共に差し出した本は『女重宝記(おんなちょうほうき)』。当時の一般女性が身につけるべき嗜みと教養、知識が詰まった女性の生活辞典だ。書物問屋・須原屋市兵衛(里見浩太朗)に選んでもらった一冊。
蔦重「お前にはとびきり幸せになってほしいんだ。身請けされて、武家の奥方やら商家のお内儀になってほしいんだよ」「女郎は世間知らずで苦労したり追い出されたりするっていうじゃないか。そうならねえように、これ読んどくといいらしいんだよ」

わあああああああ蔦重お前ってやつぁああああ!
やかましくて申し訳ない、放送を見て叫んでしまった。いや待て落ち着け。いったん深呼吸してみよう。蔦重は子どもの頃から女郎に手を出してはならぬと掟を叩き込まれており、女性に惚れるという心を抜かれてしまっている。吉原で一生働くようさだめられた男の悲劇といえよう。そして女郎には、運よく生き延びたら年季明け、あるいは身請けされるかもしれないという希望がある。身請けされると、誰かの妻、妾になって一般社会で生きられるのだ。この年(1775年)に来日したスウェーデンの植物学者ツュンベリーは『江戸参府随行記』で、「幼女期にこのような家(遊郭)に売られ、そこで一定の年月を勤めたあと自由を取り戻した婦人が、辱められるような目で見られることなく、後にごく普通の結婚をすることがよくある」と驚いている。

親の借金で売られた少女たちは「親孝行の娘」とみなされたことが、年季明け・身請け後の「普通の結婚」に繋がっていたのではないだろうか。ただし、遊郭での生活が長かったゆえに一般的な生活知識がなく、結婚が破綻したケースもあろうことは想像に難くない。

だからこその『女重宝記』……うん、わかる。須原屋さんに助言を求めたらこうなるだろうし、そのチョイスは間違ってない。だけど、だけどさあ。それはあくまでも瀬川と蔦重の関係を知らない、外部の人からのベストアンサーで「世間一般的に考える女郎の幸せ」を踏まえての贈り物であって……と思っていたら、

瀬川「重三にとって、わっちは女郎なんだね。吉原に山といる、救ってやりたい女郎のひとり」
蔦重「あー。けど、とりわけ幸せになってほしいと思ってるぜ」

そこは否定せえ!! 女として愛してなくてもいいんだ。せめて大事な仲間としてでも、この子は救われるんだ。お前を「女郎として」救ってやりたいわけじゃないと言え!!

「ありがとうござりんす。せいぜい読み込みいたしんす」

花魁の張りで取り繕わねば、泣き崩れてしまったかもしれない。瀬川は今まで九郎助稲荷の境内では一度も使ったことのない郭言葉を蔦重に投げかけ、涙を堪えて去っていった。彼女の怒りをなんとなく察したものの、ポカンキョトンとする残された蔦重。

九郎助稲荷様は、ふたりの会話を聞きながらふるふると震えていたのではなかろうか。
ではご唱和ください。この、

バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!

「俺だってあんたらとおんなじ座敷にいたかねえんだわ!」

地本問屋仲間が吉原を訪ねてきた。この場面、鱗形屋孫兵衛の装いがとてもお洒落。衿、長着、羽織、帯、そして羽織紐の色と柄合わせ。トータルコーディネートが素晴らしい。
かっこいいが「耕書堂」の一枚暖簾を一瞥する目は怒りに燃えている。

そして鶴屋喜右衛門(風間俊介)が笑顔で切り出したのは、予想通り、蔦重の地本問屋仲間入りの約束を反故にするという話だった。ここで鶴屋が扇屋宇右衛門(山路和弘)の勧める酒を断るのが、この回冒頭、勧めた酒を遠慮しようとした蔦重を詰めた「お前。俺に喧嘩売ってんのか?」という駿河屋のセリフと繋がっている。すでにこの段階で、戦いのゴングは鳴っていたのだ。

約束反故への準備はできていたので、蔦重は忘八連合との打ち合わせ通りに条件を提示する。出版するのは吉原に関わるものだけ、鱗形屋の主力商品である青本、芝居絵本、往来物(往復書簡形式の文例集。庶民教育における教材の役割があった)は扱わない。
「吉原細見」は耕書堂が作成し、無料で地本問屋たちに提供する。
地本問屋たちにとっては話がうますぎる。おそらく仲間入りを果たした次の一手を考えてあるのだろうが、この場では鶴屋と鱗形屋以外はみな乗り気であった。

そこで鶴屋は自分以外の地本問屋全員を座敷から出し、一人で語り始める。ここからもう、鶴屋の吉原者への差別意識が剥きだしになった。鶴屋の「金を積もうと動かぬものがあるんですよ」は、前回レビューで触れたケンぺル『日本誌』(1727年)の「彼がいかに裕福でも、決して公正なる市民とは認められない」を思い出す台詞だ。
鶴屋「名前は申し上げられないが『吉原者は卑しい外道』『市中に関わってほしくない』という人間がいる」
「他の人が君のことを悪く言ってるよ」こう吹き込む人間の言葉を信じてはいけない。他の人ではない、全部それを発する人間の本音だ。

それを知っている忘八の面々の怒りのボルテージが上がってゆく。この場面、忘八連合が全員よい芝居を見せてくれている。松葉屋の薄い笑いは怒ってるのが伝わるし、扇屋などは胡坐をかき、手酌で酒を呑みはじめ、目だけで「ころすぞ」と言っている。

蔦重「鶴屋さん。吉原を毛嫌いなさっている旦那様たちと話させてもらえないでしょうか」

ああ、蔦重。若いなあ! そう、彼はとても青く若いのだ。瀬川への贈り物も一切悪気のない言葉も、彼のこの青い若さゆえだったかと、この場面でスッキリした。

鶴屋喜右衛門の罵詈雑言を彼の本心だと読み取ることなく、「旦那様たち」を説得するつもりでいる。ここで鶴屋がダメ押しをした。

鶴屋「皆さん、吉原の方々とは同じ座敷にもいたくないって具合で」

おそらくだが、鶴屋は挑発して蔦重に一発殴らせるつもりだったのではないか。それで「いくらよい条件を提示されたとしても、こんな人間を地本問屋にするわけにはいきません」と仲間に説明する計画だったのではないだろうか。しかしキレたのは蔦重ではなかった。

駿河屋「俺だってあんたらとおんなじ座敷にいたかねえんだわ!」

鶴屋の襟首をつかみ階段から叩き落す。ここでハイ待ってましたとばかりに盃を飲み干し立ち上がる扇屋、スパーンと障子を開ける大文字屋市兵衛(伊藤淳史)に笑ってしまう。
忘八連合から地本問屋に吉原関連の書籍一切扱わせない宣言、出入り禁止宣言、大門くぐったら生きては出さねえぞ宣言。
江戸市中から見下されているアウトローが、階段上から見下しながらの宣戦布告であった。

次週予告。瀬川の花魁道中、また新しい装いになっているが鳥山検校が旦那としてついてるから安心。と思ったら身請け話! うつせみの体に傷が……クソ客は長サマというらしい。
足抜けと恐怖の折檻。森下佳子脚本の地獄展開が来る回なのか。
9話が楽しみのような、怖いような。

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NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
公式ホームページ

脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹、石村将太
演出:大原拓、深川貴志、小谷高義、新田真三、大嶋慧介
出演:横浜流星、安田顕、小芝風花、高橋克実、渡辺謙 他
プロデューサー:松田恭典、藤原敬久、積田有希
音楽:ジョン・グラム
語り:綾瀬はるか

*このレビューは、ドラマの設定をもとに記述しています。
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』1話イメージイラスト/主人公の蔦重と花魁・花の井は幼なじみ。初回は九郎助稲荷様がスマホで吉原を案内してくれた/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』2話イメージイラスト/吉原の花魁・花の井は平賀源内の切ない思いを見抜く。一方、江戸城内。老中・田沼意次は経済政策が理解されず、苦悩している/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』3話イメージイラスト/女郎の酷い境遇に二文字屋女将・きくは閉業も覚悟。そんな吉原に蔦重の活躍で客足が戻る。しかし、鱗形屋孫兵衛、一橋治済の動向から暗い影が……/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』4話イメージイラスト/忘八連合はみんな猫が好き? 大黒屋のりつの抱く愛猫の名は半助。蔦重はまたも吉原を活気付かせる妙案を思いつくが……/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』5話イメージイラスト/絵の才能を見込まれた幼い唐丸が失踪、気落ちする蔦重を花魁・花の井が励ます。また、頼もしい助言者・須原屋登場/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』6話イメージイラスト/青本企画に盛り上がっていた鱗形屋と蔦重は 苦い運命の岐路を経験、そこに平蔵が一言投げていく。江戸城内では髭の松平武元が上機嫌だが……/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』7話イメージイラスト/蔦重への協力を請われた花の井は笑顔に。松葉屋の女将も動き始めた/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』8話イメージイラスト/鶴屋を階段から叩き落す駿河屋たち忘八連合の痛快連携プレー。それにしても蔦重への瀬川の想いが切ない/南天
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』1話イメージイラスト/主人公の蔦重と花魁・花の井は幼なじみ。初回は九郎助稲荷様がスマホで吉原を案内してくれた/南天
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』2話イメージイラスト/吉原の花魁・花の井は平賀源内の切ない思いを見抜く。一方、江戸城内。老中・田沼意次は経済政策が理解されず、苦悩している/南天
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』3話イメージイラスト/女郎の酷い境遇に二文字屋女将・きくは閉業も覚悟。そんな吉原に蔦重の活躍で客足が戻る。しかし、鱗形屋孫兵衛、一橋治済の動向から暗い影が……/南天
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