子どもたちの支持率ナンバーワン!ヨシタケシンスケさんの絵本の世界
撮影・鏑木希実子 構成&文・梅原加奈
シンプルな絵柄と、心に留まるタイトル。大人も思わず開きたくなるヨシタケシンスケさんの絵本。
子どもたちにも大人気で、昨年開催の第4回「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」では、著書『りんごかもしれない』が総合1位を獲得し、ヨシタケさん自身も人気作者ランキング1位に輝いた。
ヨシタケさんの絵本が、子どもたちの心を掴んで離さない理由とは?
「正直に言えば、今の子どもたちの気持ちになれている、気持ちを掴めている実感はないんです。僕は小さい頃からできないことやコンプレックスが多かった。いつもどうすれば抱え込んだ不安や不満を解消できるかと考えているタイプだったんです」
「でも、大人からもらう教えとかアドバイスって、どこか上っ面なことが多い。あざといし、怒られているだけの感じがして、なんだか信用ならない。子ども時代の僕自身も、イラッとすることがあったわけです。それを経て思うのが、子どもたちだって納得したいということ」
「だから“大人だって間違うし、嘘をつくときもあるよね”みたいなぶっちゃけ話をしてくれる変わった大人がいてもいいんじゃないかって。人間ってさまざまで、嘘もついちゃうし、間違える。だけどその分、選択肢だってたくさんあっていいんだよというのを伝えるのが僕の本作りの基本」
「児童書としては王道ではないかもしれませんが、いろんな考え方があっていいんだと納得してほしい。子どもたちが僕の本を手にして、“こういうふざけた考え方だってアリなのか”と面白がってくれていればうれしいなと思います」
テーブルの上のりんごに「りんごじゃないかもしれない」という別の可能性を見出す楽しさを提示したり、やっかいな感情やつらい現実をやりすごす生き方のコツを提案したり。
ヨシタケさんの絵本はいつも、子どもたちの視野や世界をちょっとずつ広げる“背伸び”の仕方を教えてくれる。
「子どもの頃って、半歩先のことを知りたいじゃないですか。だから忖度せずに、大人にならないと分からないかも……と思うことも入れています」
「自分も子どもの頃に佐々木マキさんの『やっぱり おおかみ』を読んで、どういう意味?と不思議に思ったけれど、それでいいんだと思うんです。タイミングによって読み方が変化するのも絵本の面白いところだし、20年後にやっと気づくダジャレがあっていい。分からなかったら、親やおじいちゃんおばあちゃんたちと“どう思った?”と話をしてほしい。会話のきっかけになるのも絵本の大切な役目です」
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