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福を呼び、厄を除ける縁起物ーーその魅力

私たちの暮らしにあふれている、幸せを呼び込むモノやコトの数々。心豊かに、前向きに過ごすために、それらをあらためて探してみては?

撮影・青木和義 イラストレーション・上大岡トメ 文・嶌 陽子 構成・中條裕子

「自分だけの縁起物を作れるのもおもしろいですよね。」(「國學院大學 神道文化学部教授」 平藤喜久子さん ・左)「かわいい姿に人々の思いが込められているのが魅力。」(イラストレーター、ふくもの隊隊長 上大岡トメさん・右)
「自分だけの縁起物を作れるのもおもしろいですよね。」(「國學院大學 神道文化学部教授」 平藤喜久子さん ・左)「かわいい姿に人々の思いが込められているのが魅力。」(イラストレーター、ふくもの隊隊長 上大岡トメさん・右)

福を呼び、厄を除ける縁起物は、昔から私たちの暮らしに身近な存在。「ふくもの隊」隊長として縁起物を探求しているイラストレーターの上大岡トメさんと、神話学が専門の國學院大學教授、平藤喜久子さんがその魅力や奥深さを掘り下げた。

上大岡トメさん(以下、上大岡) 平藤先生とはもう10年以上のおつきあい。神社に関する本の監修をお願いしたのが出会いですよね。

平藤喜久子さん(以下、平藤) 先日も出雲大社にご一緒しましたね。そもそもトメさんが縁起物に興味を持ったきっかけは?

上大岡 20年ほど前に、本の仕事で日本各地の縁起物に出合ううちにおもしろくなっちゃって。その時に「ふくもの隊」を結成して、いろいろなふくものを探すようになったんです。

平藤 縁起物のことを「福を呼ぶもの」=「ふくもの」と呼んでるんですね。

上大岡 ふくものって大きく分けて神社仏閣の授与品と郷土玩具の2種類があると思うんですが、どちらも造作がかわいらしい。それだけでなく、ひとつひとつに人の心が込められているところに惹かれます。たとえば、子どもに関する縁起物ってたくさんあって、赤いものが多いんですね。昔は子どもの生存率が低くて、大きな病気もあった。だから赤いもので厄除けをして、少しでも長く生きられるようにという願いが込められているんです。

平藤 当時の人々の切実な思いが感じられますよね。

上大岡 土人形や張り子などが多いのは、土や紙が比較的手に入りやすいからだと思うし、冬の農閑期に作り、それを売って生活の足しにするなど、生活と密着しているところもいいなと。

平藤 縁起物に込められている願いも、日々の暮らしに沿ったもの。夫婦円満や子宝祈願はもちろん、商売繁盛、合格祈願のお守りなどを手にしたことがある人も多いはずです。

上大岡 神社仏閣の授与品には、かわいいけれど「えっ」って驚くような意外なものもありますよね。住吉大社の裸雛もそう。名前どおり、服を着てない男雛と女雛の土人形で、夫婦円満のご利益があるとされているんです。

平藤 ほかにおもしろいところでは、島根の万九千(まんくせん)神社には泥酔や二日酔い除けのお守りがあるんですよ。

上大岡 「お神酒あがらぬ神はなし」って書いてある。いい言葉ですね(笑)。

平藤 鷽という鳥の人形も、各地の天神さんで見られますね。

上大岡 1月に鷽替え神事というものが行われるんですよね。前の年の悪かったことを「鷽=嘘」に替えましょうというもの。一種のダジャレですよね。

平藤 「替えましょ、替えましょ」と掛け声を出しながら、皆で人形を交換し合うという神社もあります。

上大岡 鷽の人形も、神社ごとに顔や大きさが違うのも楽しいんです。

平藤 最近の話で言うと、コンピューターが普及すると、東京の神田神社ではコンピューターの「機能安全守護」のお守り(ITお守り)が生まれました。時代と共に生まれて広がっていくものもあるでしょうね。

上大岡 確かに。先日出雲大社に行った時、近くの稲佐の浜の砂を拾うといいというのを初めて知ったんですよ。その砂を出雲大社の素鵞社に納める代わりに素鵞社(そがのやしろ)の砂をいただいて帰って自宅の敷地に撒くと家内安全になるんだとか。これって最近のことですよね。

平藤 おそらくここ10年以内に広まったことだと思いますね。そうやっていつの間にか広まったことが、その後何百年も続いていくのかもしれません。

出雲大社の素鵞社に稲佐の浜で拾った砂を供え、代わりに素鵞社の砂を持ち帰る人が近年続出。「初めて知って、私も拾いました」と上大岡さん。
出雲大社の素鵞社に稲佐の浜で拾った砂を供え、代わりに素鵞社の砂を持ち帰る人が近年続出。「初めて知って、私も拾いました」と上大岡さん。

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