元気なうちに少しずつ、親と始める終活ガイド「家の片づけ編」
イラストレーション・井上沙紀 文・中嶋茉莉花
もので溢れた実家の整理、不動産や金品の相続の準備、葬儀への備えなど。
親に生前から終活を進めておいてもらえると、亡くなった後、子世代は混乱を回避しやすくなる。でもそれは、進んで死に向かうようにも思え、多くの親世代が着手できていないというのが実態。
「それであれば、終活は親任せにはしていられません。子が親の手を取り進めるほうが、『親らしい最期』を迎えられるでしょう」と奥山晶子さん。
「『この家は誰が継ぐの?』『遺影はどれがいい?』なんて露骨に尋ね、白黒はっきりするまで詰める必要はありません。ニュースで見た終活の話題や、最近参列した葬儀のことなどをさりげなく話題にするところから始めます」
不動産や銀行口座の数、終末期医療の希望……。知らないと後々大変になる項目を中心に何げない会話を繰り返し、時に踏み込み、必要な情報をメモしておけば、各場面で役に立ち、親の思いをくんだ見送り方を叶えられるはずだ。
「実はこのやりとり、親の知らなかった一面に触れられるラストチャンス。今回紹介するきっかけの言葉を参考に、早速会話を始めてみましょう」
不要なものを整理して、安全で暮らしやすい空間に
死にゆく準備のようで生前整理は親も子も消極的になりがち。でも、やらなければ、親の死後、大変になるのは子世代だ。
親の体が衰えてものの整理を億劫がる前に、まずは次の3つを優先的に着手してもらうとよい。
「本人を差し置いて勝手に処分し始めるのはNG。上手に声がけしながら、共に進めてもいい。片づいた家は、高齢夫婦が安全に暮らしやすくもなります」と奥山さん。
1. ケガにつながるもの
重ねて置いた段ボール、背の高い本棚や、高い棚の上のものは危険と隣り合わせ。
「動線にあればつまずき、地震がきたら倒れてくるかもしれない。高いところや奥にしまい込んだものは、伸び上がって腕を伸ばしたり、屈んだりのぞき込もうとすることで肩や首、腰、膝を痛めるリスクにも。実際、ケガに繋がる可能性があることをきちんと説いて誘導すれば、整理に前向きになってくれるでしょう」
「ここにものが置いてあったらつまずいて危ないよ」
2. 期限が切れたもの、過剰にあるもの
「賞味期限切れの調味料やサプリメント、ストック食品などは健康を害する可能性やスペースの無駄遣いを指摘して、処分しましょう。食器、保存容器や水筒、調理道具、ハンガー、傘などは、よく使うもの以外、数を減らすことを提案します」
「世代的に、『所有すること』が安心感につながっている人も少なくありません。手放しやすいものから始めて“捨てグセ”をつけてもらいましょう」
「これってこれから使うの?」
3. いつか使えると思って残しているもの
子どものため孫のためと、衣類やおもちゃなどをとっておく親世代は多い。中には子が何十年も前に使っていたものを再び使うと考えている人も。
「よかれと思ってのことだけに、捨てる話はタブーです。いったん引き受けつつ、誰かに譲る可能性があることを示唆。親の思いを否定せずに話を進めます」
古い本や雑誌も、「売れるかもしれないよ」と整理し、古書店へ持ち込むことを提案しましょう。
「あの服、譲ると喜ぶ人がいるよ」
片づけると決まれば、プロの手を借りると整理が進む
自分たちだけでは処理に迷い、作業が進めにくい品は、プロを頼るのも一手。紙焼き写真をアルバムごとデータ化してくれるサービスや、訪問査定から買い取りまでしてくれる業者などが便利だ。
ただし、急な訪問、執拗な勧誘を行う事業者は避けること。どこを利用するにしても、事前に実店舗の印象や口コミ、12桁の古物商許可番号の取得の有無などを確認して。
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終活・生前整理サービスRegacy(レガシー)
専門バイヤーが自宅を訪問、貴金属や骨董品を査定。買取品はトレファク店舗などで販売。(トレジャー・ファクトリー TEL.0120・55・3533)
『クロワッサン』1134号より
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