はじめての介護:失敗のない高齢者向けの自宅の整え方
イラストレーション・保立葉菜 文・殿井悠子
家族への遠慮から無理してしまう、そんな気持ちも察して
もし要介護状態になっても、できるだけ自宅で暮らしたいなら、バリアフリー改修は欠かせない。
「高齢者で一番怖いのは、転倒による骨折です」と、建築士でありながら社会福祉士の資格を持つ齋藤進一さん。
「骨折して動けなくなると、そのまま寝たきりになったり認知症状が出てしまったりすることも。誰しも行動には癖があります。例えば、玄関で立ち座りするときにいつも手をつくのであれば、段差解消よりも手をつく場所に手すりを付けたほうが転倒防止になる」
「普段不便に感じているところに手を加えるのも“バリアフリー改修”。その際、同居している人も快適に暮らせるよう、ニオイや音、光など五感に考慮した改修工事を考えるのが大切です」
住宅改修で最初に手を入れるのがトイレ。高齢になると夜間に何度もトイレに行きたくなるため、同居の家族は足音や流水音でたびたび目が覚めることも。流す音が静かな製品を選んだり、要介護者の部屋にポータブルトイレを設置したりすることも考えられる。
また最近では、後付けできるベッドサイド水洗トイレ(前ページ「トイレ」参照)も登場している。
「寝室のクローゼットに設置することもでき、不使用時は扉を閉めて隠せるので、本人の尊厳も保たれます。一人で行くことができるなら家族の負担も減る、とても人気の商品です」
トイレや洗面台などは高さ調整付きの商品も多い。使う人によって調整できれば、3世代でも無理なく暮らせる。
「毎日使う場所だからこそ、自宅改修では、家族にとっても使いやすい計画を立てるのが成功の鍵です」
賃貸の場合は、福祉用具を上手に使いこなすのがコツ。浴室は改修せずに訪問入浴を利用するなど、外部サービスを活用するのも一案だ。
「その場で90度回転できてスペースを取らない6輪車椅子も出てきました。福祉用具は進化が目まぐるしいので、実際に体験できる国際福祉機器展や住宅介護機器のショールームに足を運んで、まずはどういうものがあるのかチェックしてみては」
『クロワッサン』1134号より
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