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知っておきたい介護の基礎知識:親の“もしも”にすぐ対処するためにーー備えておきたい知識と行動

親が高齢になったら、心得ておきたい介護のこと。相談場所など、初めての人にはわからないことだらけの介護の第一歩を、用語集付きで紹介します。

イラストレーション・山里美紀子 構成&文・保手濱奈美

そもそも親の介護は、どのようなきっかけで始まることが多いのだろう。

「病気やケガにより、身体的な手助けが必要になることが挙げられます。こうした場合は、介護が突然始まってしまう。ほかにも、加齢による衰弱で日常生活に支障をきたし、介護が始まるケースもあります。親が80歳を過ぎたら、いくら元気に見えても、いざ介護が必要になった時に慌てないように、心構えをしておいたほうがいいでしょう」と、介護や福祉の現場で取材を行うライターの浅井郁子さんは言う。

心構えとは、介護にまつわる基本的な仕組みを知っておくこと。

「日本には介護保険制度(※1)があり、介護が必要だと認定されると介護保険サービス(介護サービス、※2)が利用できます。介護保険制度は『介護を社会全体で支えること』を目的に創立されました。つまり“介護は家族がやるべきこと”と背負い込まなくていいのです。また、介護や高齢者に関する相談事は、各市区町村に設置された地域包括支援センター(包括、※3)で受け付けています。困った時は公的機関を頼りましょう」

そして、親の異変にすぐに気づける関係を作っておくことも大切だという。

「例えば、『以前と比べて衰えた』と感じたら家事を手伝うなど、介護未満のうちからできる範囲で親の生活のサポートを始めるのです。その延長線上で、そろそろ介護サービスを利用したほうがよいかもという見極めができるので、焦らずに済むと思いますよ」

プレ介護:親の“もしも”にすぐに対処するために、備えておきたい知識と行動

介護は病気やケガから始まることが多い

「厚生労働省の2022年の調査によると、『認知症』『脳血管疾患(脳卒中)』『骨折・転倒』という3つの原因が、介護が必要になった経緯の上位に入っています」

例えば、認知症なら物忘れなどによる生活の危機を防ぐため、脳血管疾患なら手足の麻痺など後遺症により介護が必要に。もちろん程度によって必要ない場合もある。

介護のきっかけとなる3大原因

・認知症
・脳血管疾患(脳卒中)
・骨折・転倒

「骨折・転倒」で気をつけたいのは、大腿骨骨折。高齢者はこのケガを機に、車いすや寝たきりになってしまうことがある。
「骨折・転倒」で気をつけたいのは、大腿骨骨折。高齢者はこのケガを機に、車いすや寝たきりになってしまうことがある。

日頃から見守り体制を整えよう

親の生活のサポートのほか、こんな機器を導入するのも一手。

「多くの市区町村では、民間の警備会社と連携した『緊急通報システム』を、月額300~1300円ほどで提供しています。ボタンなどを押して通報できるほか、一定時間動きがないとセンサーが作動。親が一人暮らしや、日中一人の時間がある場合に安心です」

介護は家族だけでやるべきことではない

家族も自分の生活が大切。無理せず介護サービス(※2) を利用しよう。

「介護における家族の役割は、例えば、新しい家電の使い方を教えてあげるなど、日常の延長のような手助けをしながら見守ること。ただ、介護サービスには、提供できることとできないことがあります。場合によっては家族の手助けを増やすなど、介護サービスと両輪で行うことが重要です」

以前の言動との変化を把握しよう

親が80歳を過ぎたら要注意。

「この年齢から、介護が必要だと認定される人の数がグッと増えるというデータがあります。歩く速度などの動作や、発言の変化を把握して、介護の兆候を見逃さないようにしましょう。ただ、例えば物忘れなどは、単なる加齢によるものなのか、認知症なのかがわかりにくい。次のチェックリストに多く当てはまるなら、認知症の疑いがあるかも」

もしかして認知症かも?親のこんな言動に注意

◻︎ 数分、数時間前の出来事を忘れる。
◻︎ 食事や会話をしたこと自体を忘れる。
◻︎ 日付や曜日がわからなくなる。
◻︎ 誰かに自分の物を盗られたと疑う。
◻︎ 家事や身支度に時間がかかる。
◻︎ 実際にはないものが見えると言う。
◻︎ じっとしていられない。
◻︎ 些細なことですぐ怒る。

認知症とは、脳の病気などにより、認知機能が低下して、日常生活全般に支障が出てくる状態のこと。上記のチェックリストは、その症状の一例。思い当たる言動があったら、まずはかかりつけ医に相談を。
認知症とは、脳の病気などにより、認知機能が低下して、日常生活全般に支障が出てくる状態のこと。上記のチェックリストは、その症状の一例。思い当たる言動があったら、まずはかかりつけ医に相談を。

もしかして介護が必要かも……?相談事は地域包括支援センターへ

介護が初めての人にとって心強い存在となるのが「地域包括支援センター」、略して「包括」(※3) 。

「市区町村の中学校区に一つの割合で設置されている、高齢者のための総合的な相談や支援を行う機関です。親本人はもちろん、子どもが親の介護について相談することもできますし、介護保険申請の代行など、さまざまな場面でサポートしてくれます。包括は親の住所により管轄が分かれているので、各市区町村のホームページなどから連絡先を確認しましょう」

地域包括支援センター、略して「包括」とは?

ケアマネジャー(ケアマネ、※4)、保健師、社会福祉士などが在籍していて、それぞれの専門性を活かし、連携しながら相談者の問題解決や支援にあたっている。

相談できることは?

・親の生活上の心配事
・介護保険申請の代行
・介護サービスの利用方法
・認知症ケアについて
・市区町村の助成制度など

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