パフェは五感を総動員して味わう総合エンタテインメント
撮影・小林キユウ 文・三浦天紗子
斧屋さんは、パフェ人気拡大の立役者のひとり。かたや老舗フルーツパーラーで魅力的な新作パフェを作り続ける齋藤栞さん。齋藤さんはかねてより斧屋さんのファンだそうで、パフェの話を始めるとすぐに意気投合!
斧屋さん(以下、斧屋) 僕がパフェ評論やさまざまな活動を始めたのが2011年なんですよね。そのころはまだ年間に30~40本くらいしか食べてなかったと思います。最近は少し落ちていますが、ピーク時には500本食べていました。
最高記録というか、我ながらやり過ぎだと思ったのは札幌2泊3日の50時間で22本かな。もちろん、老舗である京橋千疋屋さんには何度も足を運んでいます。「夜パフェ」への取り組みにも注目していたので、パティシエールの方と直接お話しできるのはうれしいですね。
齋藤栞さん(以下、齋藤) 斧屋さんのご著書を拝読していて、お会いできるのを楽しみにしていました。私自身もパフェの食べ歩きを休みの日によくするのですが、ご本やSNSはすごく参考にしています。少し緊張していますが、よろしくお願い致します。
斧屋 僕も今日はせっかくの機会なので、いろいろうかがいたいことをまとめてきました。ちなみに、齋藤さんはパフェを担当して何年目なんですか。
齋藤 店舗オリジナルなどのパフェの考案は9年くらい行っておりましたが、
夜パフェに関わらせてもらえるようになってから3年目くらいになります。それまでは、夜パフェチームを設立した2名の女性スタッフが魅力的な商品を作っておりました。
パフェは、縦長のグラスに盛られるから意味がある。
斧屋 僕は、パフェの魅力って「食べ物」という単純な体験ではくくれないところにあると思うんですね。本でも書いていますが、五感で楽しめる振り幅が大きいこと、その場のその瞬間で楽しむライブ感があること、基本的には縦構造化することで物語性を楽しめること。
パフェの中身を平皿に盛りつけても内容は同じですが、縦長にしたからこそ意味があるというか。「パフェはエンタテインメントだ」というのが持論なんです。これは食べる側から見た意見ですけれど、作る側にとってはどんなところが楽しいんでしょうか。
齋藤 食べている方を想像しながら創る、ということに面白さを感じています。秋のパフェを夏に考えるなど、季節的にワンシーズン先を考えることが多いのですが、「秋ってまだ暑くて冷たいものが欲しくなるのかな、気持ち的には夏が終わった寂しさもあり、秋を早く感じたい気持ちも強くなってきそう」など、まずお客さまがパフェを食べる環境を想像します。次にパーツを決め、順番を考えていく。
その過程でテーマを深く調べて果物の組み合わせの共通点を探し、千疋屋の果物をどう魅せていくか試行錯誤していきます。そういった工夫を込めた商品が共有されることに高揚感があり、この時季にしか食べられない千疋屋の果物×果物の季節感を際立たせる食材、テーマでライブ感を味わっていただく体験を提供できることが、とても楽しいです。
斧屋 フルーツパフェはフルーツの美味しさでほぼ魅力が決定されてしまうところがあるのですが、京橋千疋屋さんのクリームは果物の甘さや香りを殺さないのですごくいいですね。メロンパフェは最後に来るヨーグルトソースで見た目よりさっぱり。僕は好きなフルーツは後回しにする派なんですが、盛り付けるときや構成を考えるときに意識していることはありますか。
齋藤 フルーツパフェでいうと、今が盛りの果物は手前に置いて「旬なんですよ」と伝えたいです。盛り付けるときは華やかさを大事にしたいので色の数が豊富に見えるように、同じ色の果物、例えば柿とみかんは隣り合わないように配置したりします。
フルーツパフェ
旬のフルーツを味わうならこれ。
1.メロン
2.いちご
3.セルフィーユ
4.生クリーム
5.シャインマスカット
6.パイナップル
7.バナナ
8.りんご
9.みかん
10.洋梨
11.洋梨のソルベ
12.柿
斧屋 僕はパフェグラスもパフェの食べ方や楽しみ方に関わってくると思っているのでチェックしてしまいます。口が広いと食べるときの自由度が高いですよね。千疋屋さんのフルーツパフェのパフェグラスはかなり口が広め。メロンパフェのはカクテルグラスのような形ですね。
マスクメロンパフェ
メロン尽くしのパフェは憧れの味。
1.セルフィーユ
2.生クリーム
3.メロンソルベ
4.カットメロン
5.ヨーグルトソース
6.バニラアイス
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