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パフェは五感を総動員して味わう総合エンタテインメント

世界でも絶賛される日本産フルーツ。その美味しさを存分に味わえる、老舗フルーツパーラーで語り合うパフェ愛。

撮影・小林キユウ 文・三浦天紗子

齋藤 (齋藤さん作の夜パフェをサーブしながら)こちらもどうぞ。

斧屋 「初茜(はつあかね)」ですね! 去年も話題になっていましたよね。

齋藤 ありがとうございます。ディテールは少し変えるかもしれませんが、来年も年明けの夜パフェとして登場する予定です。

斧屋 パフェを3層に区切っていて、底のジュレは初日の出のグラデーションを思わせます。新年仕様のすごく手の込んだパフェだと思い、Xに食レポをポストしました。

夜パフェ 初茜

パフェは五感を総動員して味わう総合エンタテインメント

新年の祝祭感を感じさせるしつらえ。

トップに南天といちごが使われ、新年を言祝ぐ気持ちでいただくのにぴったり。ワインやリキュールがやや強めに香り、大人の味を堪能できる。2,970円
トップに南天といちごが使われ、新年を言祝ぐ気持ちでいただくのにぴったり。ワインやリキュールがやや強めに香り、大人の味を堪能できる。2,970円

1.いちご(撮影時は赤いちごのみ) 
2.生クリーム 
3.ゴマのクランブル 
4.飴 
5.クロゼイユカード(赤スグリのピューレ×カスタードクリーム) 
6.グラッセパイ 
7.金時豆と白あんのアイス 
8.ゆずと金柑のアイス 
9.ホワイトチョコプレート 
10.レアチーズクリーム 
11.白ワインジュレ 
12.カシスジュレ

齋藤 はい、拝見しておりました。赤いちごと白いちご(淡雪(あわゆき))の紅白も鮮やかで、パーツには南天や金時豆を使用し、お正月のおせちをイメージしました。新年の初パフェとしておめでたい感じを詰め込みたかったパフェです。

 「『初茜』はこの新春にも 食べられるんですね。 記憶に残る一本。」
「『初茜』はこの新春にも 食べられるんですね。 記憶に残る一本。」

斧屋 本でも書いていますが、僕はパフェをフルーツパーラー系とパティスリー系で区分けをしています。フルーツパーラー系では重視されない要素ですが、パティスリー系といえる京橋千疋屋さんの夜パフェでは“香りと食感”をいかに使うかがキモというか。

齋藤 「初茜」だと食感はグラッセパイやゴマクランブルが、香りとしてはゆずと金柑のアイスや、ジュレの白ワインなどで変化をつけていますね。「山粧(やまよそお)う」では、ジントニックのグラニテにレモンバーベナというハーブを、カリカリの食感を出すのにカカオニブやクルミを入れました。

斧屋 夜パフェだとお酒の使い方もポイントですね。ところで、パフェの世界では市場に出回っている果物はほぼ使われ尽くしていますし、ハーブでも野菜でも何でもありで、魚介を使うお店も出てきています。あえて言うなら、マンゴスチンなどの南国のフルーツがふんだんに使われたパフェはなかなかないので、食べてみたいです。

齋藤 そうですね。南国系のフルーツは研究の余地がありそうです。

斧屋 実際、夜パフェの構成案は、どのくらいかけて考えるんですか。

【齋藤さんが開発した夜パフェ。】上左写真は’22・’23年8〜9月の「山粧う」、右は ’24年7〜8月の「peach one romance 〜恋 する桃〜」。下のイラストは、’25年1月から登場するパフェ「初茜」のアイデアスケッチ。
【齋藤さんが開発した夜パフェ。】上左写真は’22・’23年8〜9月の「山粧う」、右は ’24年7〜8月の「peach one romance 〜恋 する桃〜」。下のイラストは、’25年1月から登場するパフェ「初茜」のアイデアスケッチ。

齋藤 1カ月から1カ月半くらいです。果物やクリームそれぞれが美味しくても一体感がないとパフェとして提供が難しいので、一からやり直すこともあります。社内での試食会を経てお店に出すので、試作と試食を繰り返します。

斧屋 そもそも、千疋屋さんのような老舗が夜パフェに参入してきたというのも興味深いのですが。

齋藤 上司の話では、パーラーはどうしても夜の集客が少ないので、夜も来ていただける場面を考えようとか、パフェのパーツの作製でスタッフたちの技術やパフェ考案スキルの向上が期待できるといった目的があったそうです。あと、札幌で始まったシメパフェブームの影響も大きかったと。

斧屋 それで、新作もあり、「初茜」のようなリバイバルもあり、となるんですね。齋藤さんのパフェ作品、ほかはどんなものがありますか。

齋藤 2024年だと、「桜滴(さくらしずく)」とか「恋する桃」とかがそうです。そのほかの作品も、新しい夜パフェのメンバーと共同で作製しております。

斧屋 もしかして「山粧う」も齋藤さんの作品ですか。

齋藤 はい、そうです。あれは’22、’23年の8月半ばから9月いっぱいまで提供していた夜パフェです。覚えていてくださったとは光栄です。

斧屋 やっぱり。パフェの名付けセンスもすばらしい。「初茜」も「山粧う」も確か季語から取られていた気がします。

齋藤 パティスリー系のパフェでも季節の移り変わりを表現するのにフルーツは重要で、その季節感を夜パフェのメニュー名にものせられたらいいなと。どうやったら果物と繋げられるのだろうかと考えているときに、俳句の季語辞典を眺めていて出合った言葉でした。

斧屋 研究熱心ですね。

齋藤 ありがとうございます。今後もフルーツパーラー店であるという軸を忘れずに、お客さまに愉しんでいただける商品作りをしていきたいです。

「パフェの名付けに季語を使っているのをわかってもらえた!」
「パフェの名付けに季語を使っているのをわかってもらえた!」

京橋千疋屋 表参道原宿店

京橋千疋屋●『千疋屋総本店』より暖簾分けされ、1881年に誕生。東京・中橋(京橋の旧名)広小路に店を開く。初の東京オリンピックの翌1965年、渋谷区神宮前(原宿)に『フルーツパーラー千疋屋』をオープン。パフェの発祥については戦前の資料が少なくはっきりしていない。果物をグラスに入れるという点で似ている「フルーツポンチ」が銀座千疋屋で売り出されたのが大正12年。昭和初期のメニューには「フルーツパフェ」も載っている。パフェにも使われる〈箱入りマスクメロン〉は千疋屋の代名詞的存在で、名人級の生産者が作るものは形も味のバランスも最上で熟度が増しやすい逸品。
京橋千疋屋●『千疋屋総本店』より暖簾分けされ、1881年に誕生。東京・中橋(京橋の旧名)広小路に店を開く。初の東京オリンピックの翌1965年、渋谷区神宮前(原宿)に『フルーツパーラー千疋屋』をオープン。パフェの発祥については戦前の資料が少なくはっきりしていない。果物をグラスに入れるという点で似ている「フルーツポンチ」が銀座千疋屋で売り出されたのが大正12年。昭和初期のメニューには「フルーツパフェ」も載っている。パフェにも使われる〈箱入りマスクメロン〉は千疋屋の代名詞的存在で、名人級の生産者が作るものは形も味のバランスも最上で熟度が増しやすい逸品。

東京都渋谷区神宮前1・11・11 グリーンファンタジア2階 
TEL.03・3403・2550 
営業時間:11時〜20時(夜パフェラストオーダー19時、パーラーメニューラストオーダー19時30分) 無休

  • 斧屋

    斧屋 さん (おのや)

    パフェ評論家

    パフェの魅力を探究するコミュニティ「パフェ大学」主宰。東京大学文学部卒業。パフェの魅力をSNSや書籍など多くのメディアで発信中。

  • 齋藤 栞

    齋藤 栞 さん (さいとう・しおり)

    「京橋千疋屋」京橋本店 パティシエール

    新潟県出身。製菓専門学校を卒業後、2013年に京橋千疋屋に入社、パーラー部に配属。3年目よりパフェの開発に携わるようになる。

『クロワッサン』1132号より

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