パフェは五感を総動員して味わう総合エンタテインメント
撮影・小林キユウ 文・三浦天紗子
齋藤 (齋藤さん作の夜パフェをサーブしながら)こちらもどうぞ。
斧屋 「初茜(はつあかね)」ですね! 去年も話題になっていましたよね。
齋藤 ありがとうございます。ディテールは少し変えるかもしれませんが、来年も年明けの夜パフェとして登場する予定です。
斧屋 パフェを3層に区切っていて、底のジュレは初日の出のグラデーションを思わせます。新年仕様のすごく手の込んだパフェだと思い、Xに食レポをポストしました。
夜パフェ 初茜
新年の祝祭感を感じさせるしつらえ。
1.いちご(撮影時は赤いちごのみ)
2.生クリーム
3.ゴマのクランブル
4.飴
5.クロゼイユカード(赤スグリのピューレ×カスタードクリーム)
6.グラッセパイ
7.金時豆と白あんのアイス
8.ゆずと金柑のアイス
9.ホワイトチョコプレート
10.レアチーズクリーム
11.白ワインジュレ
12.カシスジュレ
齋藤 はい、拝見しておりました。赤いちごと白いちご(淡雪(あわゆき))の紅白も鮮やかで、パーツには南天や金時豆を使用し、お正月のおせちをイメージしました。新年の初パフェとしておめでたい感じを詰め込みたかったパフェです。
斧屋 本でも書いていますが、僕はパフェをフルーツパーラー系とパティスリー系で区分けをしています。フルーツパーラー系では重視されない要素ですが、パティスリー系といえる京橋千疋屋さんの夜パフェでは“香りと食感”をいかに使うかがキモというか。
齋藤 「初茜」だと食感はグラッセパイやゴマクランブルが、香りとしてはゆずと金柑のアイスや、ジュレの白ワインなどで変化をつけていますね。「山粧(やまよそお)う」では、ジントニックのグラニテにレモンバーベナというハーブを、カリカリの食感を出すのにカカオニブやクルミを入れました。
斧屋 夜パフェだとお酒の使い方もポイントですね。ところで、パフェの世界では市場に出回っている果物はほぼ使われ尽くしていますし、ハーブでも野菜でも何でもありで、魚介を使うお店も出てきています。あえて言うなら、マンゴスチンなどの南国のフルーツがふんだんに使われたパフェはなかなかないので、食べてみたいです。
齋藤 そうですね。南国系のフルーツは研究の余地がありそうです。
斧屋 実際、夜パフェの構成案は、どのくらいかけて考えるんですか。
齋藤 1カ月から1カ月半くらいです。果物やクリームそれぞれが美味しくても一体感がないとパフェとして提供が難しいので、一からやり直すこともあります。社内での試食会を経てお店に出すので、試作と試食を繰り返します。
斧屋 そもそも、千疋屋さんのような老舗が夜パフェに参入してきたというのも興味深いのですが。
齋藤 上司の話では、パーラーはどうしても夜の集客が少ないので、夜も来ていただける場面を考えようとか、パフェのパーツの作製でスタッフたちの技術やパフェ考案スキルの向上が期待できるといった目的があったそうです。あと、札幌で始まったシメパフェブームの影響も大きかったと。
斧屋 それで、新作もあり、「初茜」のようなリバイバルもあり、となるんですね。齋藤さんのパフェ作品、ほかはどんなものがありますか。
齋藤 2024年だと、「桜滴(さくらしずく)」とか「恋する桃」とかがそうです。そのほかの作品も、新しい夜パフェのメンバーと共同で作製しております。
斧屋 もしかして「山粧う」も齋藤さんの作品ですか。
齋藤 はい、そうです。あれは’22、’23年の8月半ばから9月いっぱいまで提供していた夜パフェです。覚えていてくださったとは光栄です。
斧屋 やっぱり。パフェの名付けセンスもすばらしい。「初茜」も「山粧う」も確か季語から取られていた気がします。
齋藤 パティスリー系のパフェでも季節の移り変わりを表現するのにフルーツは重要で、その季節感を夜パフェのメニュー名にものせられたらいいなと。どうやったら果物と繋げられるのだろうかと考えているときに、俳句の季語辞典を眺めていて出合った言葉でした。
斧屋 研究熱心ですね。
齋藤 ありがとうございます。今後もフルーツパーラー店であるという軸を忘れずに、お客さまに愉しんでいただける商品作りをしていきたいです。
京橋千疋屋 表参道原宿店
東京都渋谷区神宮前1・11・11 グリーンファンタジア2階
TEL.03・3403・2550
営業時間:11時〜20時(夜パフェラストオーダー19時、パーラーメニューラストオーダー19時30分) 無休
『クロワッサン』1132号より
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