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やってみよう、見守りや防犯、体の不自由さも補うスマートホーム化。

半身麻痺になったことを契機に自宅を総スマート化した藤川成康さんを訪ね、その未来的な生活を検証。私たちのこれからの暮らしに有益なことが満載でした。

撮影・中島慶子 イラストレーション・山下アキ

見守りや防犯、体の不自由さも補う、スマートホームが担う役割とは。

高齢の親の生活も保全。安心感が得られる毎日に。

藤川さんは妻と、現在91歳の母と同じ家で暮らしている。

「同居とはいえ母は主に自分の部屋で過ごしているため、プライバシーは保たれています。ただし高齢なので終日の見守りは必要。母が自室で使用する家電をスマート化して私のスマホなどに通知が来るようにしたり、喉や肺の健康のためには部屋の湿度管理が重要なので環境センサーも置いています。また、トイレや洗面所にセンサーを設置して使用状況がわかるようにしているから、中で何かが起きてもすぐ対応できる。こういったスマートデバイスは遠隔操作もできるので、別居している場合でももちろん使えます」

身体機能が衰えるのは、親世代の話だけではない。自分自身もやがて歳をとれば体は弱くなってくるし、また藤川さんのように病気や事故などで以前のようには動けなくなる状況もあり得る。そんな不自由さを補ってくれるのもスマート製品だ。今後、介助の手が不足する社会も想定して検討しておくのは一考かもしれない。
「私は自分自身が身体障害の当事者になったことで身の回りのスマート化がはかどりましたが、ただ便利なだけでなく、この体でも自分らしく楽しい生活が送れているのも、スマート製品のおかげだと思っています」

また藤川さん宅の玄関は、階下まで移動しなくてもいいようにとスマートロックや人感センサーなどを設置したが、併せて防犯対策にもなっている。

「玄関ドア前に立った人を検知すると、ダイニングにあるスマートスピーカーで来訪を通知。同時に、モニター付きスマートスピーカーに玄関カメラの様子が映されます」

このように、ひとつの目的のみではなく、デバイス同士を連動させることでさまざまな事態に備えられるのもスマート製品の強み。とはいえ、何でも連携できるわけではないので、製品の組み合わせにも制約があるのが現状だ。

「明るい話題としては、『Matter(マター)』という、これからのスマートホームの共通国際規格が作られました。これにより、従来はメーカーごとに異なっている通信方式やIoTデバイスが一貫した規格に統一されます。いまはまだすべてのデバイスが導入・対応しているわけではありませんが、将来的にはよりスマートホームの利便性と安全性が高まると思います」

スマートデバイスを活用するためのサイトを運営する藤川さんは、デジタルに疎い高齢者層こそ、スマート化によって暮らしが豊かになるという。

「いまはスマートホーム実践までをサポートする相談サービスを行っています。今後の夢としては、セキュリティなどの問題から課題は多いのですが、スマホだけをお預けしてもらえば、後はすべてこちらでセットアップしてからお返しし、すぐにスマート製品が使えるようになるようなサービスもできればと思っています」

安否確認から体調管理まで。  高齢者の暮らしを見守る。

離れて暮らす不安を減らす手助けになるスマート家電。センサーは開閉や照明の点灯だけでなく、通知設定することで安否確認に。

下右・トイレは蓋の開閉センサーと人感センサーで利用状況を検知。下左 ・洗面所は人感センサーに加え、環境センサーでモニタリングも。左・各所を使用するとリビングに置いたスマートライトバーの色が変化する。
下右・トイレは蓋の開閉センサーと人感センサーで利用状況を検知。下左 ・洗面所は人感センサーに加え、環境センサーでモニタリングも。左・各所を使用するとリビングに置いたスマートライトバーの色が変化する。

特に高齢の一人暮らしで心配なのがトイレや浴室での転倒。使用時に通知があれば、滞在時間が長すぎるなどの異変に気づくことも可能。

右・開閉センサーを付けたドア。夜、トイレに行くために部屋を出ると、自動で廊下の足元灯と洗面所、トイレの照明が点灯。下・左はスマート加湿器。設定に合わせて部屋の湿度を管理する。右は生活確認用に開閉センサーを付けた電気ポット。
右・開閉センサーを付けたドア。夜、トイレに行くために部屋を出ると、自動で廊下の足元灯と洗面所、トイレの照明が点灯。下・左はスマート加湿器。設定に合わせて部屋の湿度を管理する。右は生活確認用に開閉センサーを付けた電気ポット。

同居の場合は空き状況がわかるため不要な行き来も防げる。また、温度や湿度、騒音などを環境センサーで数値化して、スマホでコントロールできるようにすると、遠方にいても高齢者の住環境を快適に保てる。

高齢の親の部屋にカメラやモニターを設置、その様子を自分のスマホで見守る。
高齢の親の部屋にカメラやモニターを設置、その様子を自分のスマホで見守る。

体を動かすのが困難でも、リモート操作で不自由さ解消。

スマート家電を活用すれば、物を使ったり運んだりするためにいちいち立ち上がって移動する必要もなくなる。

部屋の設備を調整したり物を運搬するのも、スマホや手元にあるボタン操作で。
部屋の設備を調整したり物を運搬するのも、スマホや手元にあるボタン操作で。

連携したスマホのほかにボタンで操作することも可能なので、「これを押せば動く」といったシンプルな取り扱いがしたい人も安心。

藤川さんのデスク横には、電動ロールカーテンリモコン、デスクトップライトのスイッチを押す指ロボット、スマートディマースイッチ(カーテンや照明を声で調節する)などがまとめられ、座りながら操作できる。
藤川さんのデスク横には、電動ロールカーテンリモコン、デスクトップライトのスイッチを押す指ロボット、スマートディマースイッチ(カーテンや照明を声で調節する)などがまとめられ、座りながら操作できる。

これだけのために動きたくない、でも人に頼むほどでもない、といった将来の切実な悩みにも対応できそうだ。

右・ボタンを押すとその場所へ移動するロボット〈カチャカ〉。右の専用ワゴンの下に連結することで乗せたものを指示通り運搬してくれる。左上、左下・リビングの壁やソファのアームレストなど至る箇所にボタンを配置している。もちろんスマホ操作も可能。
右・ボタンを押すとその場所へ移動するロボット〈カチャカ〉。右の専用ワゴンの下に連結することで乗せたものを指示通り運搬してくれる。左上、左下・リビングの壁やソファのアームレストなど至る箇所にボタンを配置している。もちろんスマホ操作も可能。

来客対応から鍵のかけ忘れにも。玄関に防犯システムを取り入れる。

スマホで自宅の鍵を解施錠できるスマートロック。玄関まで行かずに解錠できるのはもちろん、アプリで管理するので、外出先でもスマホで施錠状態確認ができてとても便利。

藤川さん宅のインターホンはスマート化していない一般的なもの。玄関にスマートロック、インターホンにスマートボタンを取り付けることで、2階にいてもパネルやスマホ画面を見ながら玄関の解施錠を可能に。
藤川さん宅のインターホンはスマート化していない一般的なもの。玄関にスマートロック、インターホンにスマートボタンを取り付けることで、2階にいてもパネルやスマホ画面を見ながら玄関の解施錠を可能に。

アプリによっては鍵の開閉時にカメラが自動録画して映像履歴を残したり、ロックの暗証番号を遠隔で変更することも可能。後付けも簡単なので、防犯対策として備えておきたい。

ピンポンと鳴っても条件反射でドアを開けずに、まずはスマホの画面上で確認。
ピンポンと鳴っても条件反射でドアを開けずに、まずはスマホの画面上で確認。
  • 藤川成康

    藤川成康 さん (ふじかわ・なりやす)

    ITコーディネータ、介護福祉士、社会福祉士

    「地域密着型プロバイダー Ginzado-Net」を開設、地元である新潟・三条市に密着した活動を通し、地域のインターネット利用促進に大きく貢献。現在はスマートホーム実践情報サイト「ONE&(ワンド)」も運営している。

『クロワッサン』1125号より

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