青木崇高さん「僕自身、一児の親として、読むのがとても怖い脚本でした」【今会いたい男】
映画『ミッシング』では誠実な夫役を真摯に演じています。
撮影・天日恵美子 ヘア&メイク・NANA 文・木俣 冬
「思いやりある社会を 作るきっかけにこの映画がなれたら。」
「僕自身、一児の親として、読むのがとても怖い脚本でした」
青木崇高さんは映画『ミッシング』との出合いをこう語る。失踪した幼い娘の捜索を続ける夫婦の物語で、当事者の切実な思いと、非当事者の他人事な反応の温度差が描かれている。
「吉田恵輔監督の書いた脚本を読んで感じたことですが、この家族の状況に近い方にとって『ミッシング』を観ることはつらく、難しいことかもしれません。しかし、この映画の存在をきっかけに、まわりの方々や世間全体が少しでも思いやりのある優しい社会になれば、意義があるのではないかと感じました」
青木さんは、娘を探し続ける父親の役を演じることに極めて慎重だった。
「今回の役は、当事者の方の深い悲しみを完全に実感できないにもかかわらず演じることが、とても恐れ多いと思いました。しかし、やると決めた以上、本当にしっかり向き合わないといけないなと覚悟を決めて臨みました」
青木さんが演じる夫・豊は、自身も娘が心配でならないが、それ以上に感情が激しく昂る妻を辛抱強く支えようと努めている。
「“寄り添う”という言葉も簡単には使えない気がして」と逡巡していたが、これぞ寄り添うなのではないか。青木さんの造形した夫に、希望の光を感じた。
「妻・沙織里役の石原さとみさんが自分の体に役を深く落とし込んで演じていて、本当に大変だったと思います。僕はどちらかというと反応する役割で、石原さんの言動にできるだけ心を傾けるように心がけました。そうしたら、監督に『映ってないときでもリアクションしているね』と言われました」
デビューして22年、多くの名作で主演もやれば助演もやって、最近は韓国映画にも進出した。これからますますの活躍が期待される青木さん。心身ともにハードな仕事が続くとき、息抜きはどうしているのだろうか。
「仕事で行った現地で、ランニングや散歩をしながら、その土地ならではのごはん屋さん、神社仏閣や名所を見つけることが好きです。『ミッシング』では沼津や蒲郡でロケを行いました。海沿いの街には美味しいものが多いんですよね。蒲郡では一本、橋がすーっと架かった先の島にすてきな神社を見つけて、リフレッシュできました」
どこまでも気持ちの良い人だった。
『クロワッサン』1117号より