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老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

家族の人数や暮らしの変化に合わせて、間取りや部屋の使い方を変えられたら、普段の生活が心地よく変わります。

撮影・小川朋央 イラストレーション・川合翔子 文・田村幸子

家族で住んだ家を両親のためにリフォーム。 老後が快適になるように考えました。

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

建築家の倉林貴彦さんの実家は、1989年に竣工。亡き祖父と、父と母、倉林さん姉弟の5人家族の住まいだった。両親が仕事をリタイアし、家で過ごす時間が増えた2019年に、1階のリフォームをすることになった。

「以前は、陽が当たって庭が見えるところに客間がありましたが、ほとんど使っていなかったんです。逆に、家族がよく使う台所や茶の間は北側の狭い場所でした。スペースはあるのに、なぜこんな狭いところで食事をしているのか不思議でした」と倉林さん。

まず、昭和建築の細かく仕切られた部屋の壁や欄間などを取り払ってひとつの空間にし、北向きだった台所を家の真ん中に。母・國子さんが趣味の洋裁を楽しめるクラフトスペースも作った。リビングの低い位置に窓を作ったのもアイデアだ。隣家からの視線も気にならず、庭とつながりのある空間になった。

「費用が無駄にかからないよう既存で使えるところはうまく生かすようにしました。また、母の意見で動線として暮らしやすく、将来介護しやすい空間づくりは意識しました。トイレとお風呂をつなげたり、寝室にできるフレキシビリティのあるゲストルームを作ったのも工夫の一つです」

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

全体の床面積は広いのに、祖父の部屋、客間、応接間と細かく区切られていたので、壁や欄間を取り外してひとつの空間にした。北向きだった台所を家の中心部に移動し、応接間を北欧家具が似合うリビングにチェンジした。

北向きの台所と狭い茶の間を高い天井のゲストルームに。

陽当たりの悪い北向きが常識だった昭和の台所。隣の4畳半が家族が団欒できる茶の間だった。低い天井を取り払い、木のぬくもりを感じる空間に。将来、両親が1階で生活することも考え、寝室になる可能性を見据えてリフォーム。

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

押し入れがコンロとレンジフードに。 驚きの発想で難問解決。

陽当たりのいい南向きのキッチンを作るために、高さのある冷蔵庫やコンロとレンジフードは、旧和室の押し入れスペースを活用。「ここにキッチンを移動させたことで、全体のリフォーム案がブレイクスルーしました」

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

使い勝手とローコストを両立、オーダーメイドの棚付きキッチン。

シンクは、アイランド型キッチンではなく、普通のシステムキッチンの背面に手元を隠せる木製の棚を取り付けている。棚にはお茶を入れる時に使うものや、お盆などをセットして。2人用テーブルは、リビングのテーブルと同じ素材でネクストテーブルとしても使える。

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

将来のため、浴室との動線を考えてトイレのドアを2つに。

浴室の脱衣スペースとトイレの壁を取り外し、引き戸をつけた。「2つの方向から出入りできるトイレなら介護も楽になるそうです。また引き戸にしたことで、もし車椅子を使うようになっても出入りしやすくなります。これはケアマネジャーの仕事をしていた母からのアイデアでした」

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

窓の位置を下げると、視線を気にせず庭の景色が楽しめる。

住宅地にある一軒家なので、隣家からの視線も気になる。リフォームとともに整えた庭を眺めてほしいという願いを込め、あえて壁の下半分の位置に窓をつけて、外から家の中が見えないように。庭と部屋に一体感が生まれ、モダンなリビングに生まれ変わった。

老後が快適になるように考えた、両親のためのリフォーム。

(BEFORE)

客間は庭が見える南側だったが、常にカーテンを引いていて、庭とのつながりは希薄だった。
客間は庭が見える南側だったが、常にカーテンを引いていて、庭とのつながりは希薄だった。
  • 倉林貴彦

    倉林貴彦 さん (くらばやし・たかひこ)

    一級建築士

    1978年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。アトリエ・ワンを経て、2016年倉林貴彦建築設計事務所開設。

『クロワッサン』1112号より

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