“あの瞬間”があったから今の私がいる、と日笠雅水さんは断言する。
それは地元、岡山・倉敷の中学に通っていたころ、夏休み明けの教室で友だちからザ・タイガースが載った芸能雑誌を見せられて、「誰がいい?」と聞かれるもメンバーの顔もわからず……という出来事があったあと。たまたま観ていたテレビの画面で歌う沢田研二さん(ジュリー)を目にしたときだった。
「突然、沢田研二さんがアップで“君だけに〜”と歌いながら、振りで手をこちらにかざして指をさしていて。その瞬間、人生のツボを全部押された、というか。そのときの衝撃が、私の人生を変えたわけですよ」
ザ・タイガースの「君だけに愛を」という曲で、沢田研二さんがサビで“君だけに〜”と歌いながら指さすポーズは、当時“黄金の人差し指”の異名で呼ばれた。それが画面を通して自分をさした、その瞬間に日笠さんは「私が行く場所は“あちら側”なんだ」と確信した。
そこから、音楽が好きになり、沢田さんが出演するラジオにリクエストはがきを書くという日々が始まった。同じころ、あることから手相に興味を持つように。
「ジュリーが自分の手形を芸能雑誌の付録に載せていて、その手を見たときに初めて手相を意識したんです」
家に1冊だけあった手相の本を手に取って読んでみると、「手相ってそのまんま人の相、どういう感じの人なのか、どうなっていくのか、何か読み取れるような気がした」という。