白い皿に民藝やガラス…うつわを生かす福田里香さんの5つの提案。
まずは、センスのいいうつわ選びとコーディネートのレッスンから。
撮影・馬場わかな 文・上條桂子
白い皿に民藝やガラス。うつわを生かす5つの提案。
多様な形の白い器が食卓を華麗に。
仕事柄、さまざまな器を所有している菓子研究家の福田里香さん。一番多いのは白い器だという。写真の趣あるオーバル皿は長さ55センチほどで、フランスのアンティーク品。上にのった絵皿は、三宅瑠人さんの絵柄を見て即決したもの。シンプルだが縁の部分に特徴がある石川隆児さん作の小皿など、ひとことで白といってもさまざまだ。
「カップや小皿をテーブルに複数出すときも、白なら同じシリーズでなくとも統一感が出ます。白い器だけを並べる時は、微妙な色味の違いや形の特徴がある器を選ぶと単調にならず、ほどよいニュアンスに。また、柄や色のある個性的な器を使う際、白の器を加えると、テーブルでの調和を助けてくれます」
清涼感のあるガラスの器は色で遊ぶ。
「ガラスの器は、ワインや冷たいドリンク、耐熱なら温かいお茶にも使えて、蕎麦猪口としてもちょうどいい。なかでも好きなのはカラフルな器。軽やかに色を表現できるのは、透明感のあるガラス素材ならではの魅力だと思います」
来客時にそれぞれ違う色の器を配すると、一目で自分のものがわかるという利便性や楽しさもある。ぜひ派手な色で遊んでほしい、と福田さん。
「たとえば赤やピンク。器として使うには少し難しく感じるかもしれませんが、ガラス素材だと印象が強過ぎず、デザートやケーキもよく映えます」
写真の器は、作家・辻和美さん作。プレートやグラスなど、長年愛用中だ。
気に入った食品の器は大切に再利用。
市販の食品の容器も立派な器だという福田さん。持ち手がついた器はコッツウォルズのはちみつ瓶。ゆずの形が愛嬌のある器はゆずこしょうが入っていたもの。大阪『かん袋』の瓶入りくるみ餅、北九州『万玉』の鶯宿梅(おうしゅくばい)という梅肉ペーストの器などなど。食べ終わった後は塩やスパイスなどを入れて愛用している。
「意匠が魅力的なだけでなく、たとえば塩味や酸味が強い食品などが入っていた器は、食品と器の成分が有害な化学反応を起こしたりせず、安心して再利用できる。そういった作り手の知恵も含めて愛着が湧きます。人に差し上げる手土産を選ぶ時にも、器ごととっておきたくなるものを選びたいですね」
料理やお菓子、 どんなものにも合う民藝の器。
「美は生活の中にある」とし、毎日の生活の中で使う道具の美しさを見いだした民藝(民衆的工芸)。福田さんの生活の中でも民藝の器は重宝している。
「真ん中にあるのは沖縄のやちむんなのですが、フランス菓子をのせても不思議と合う。唐草模様はアジアだけではなく、ヨーロッパでも伝統的に見られる意匠だからです。また、奥はイギリスのリーチポタリー製、手前は福岡の福田るいのもの。世界各地で作られた器ですが、同じ食卓に置いても馴染んでしまう、不思議な魅力があります」
良質な民藝の器は、吉祥寺『サンク』や代官山の『SML』、新宿の『備後屋』などを巡っていると、出合うことが多いという。
お茶の時間を豊かにする茶器の数々。
福田さんにとって「お茶」は、会話を楽しむもの。まずは“見立て”のエッセンスを採り入れた茶器使いで場を温める。
「茶道具を入れた白樺の容器は、スウェーデンの薄焼きパン、クネッケの保存用です。中国茶を入れたのは、日本で江戸時代に輸出用に作られていた〝卵殻手(らんかくで)〟のティーカップ。京都の『Kit』で購入しました。きのこや銀杏など、装飾がいろいろな吉祥モチーフに擬態したチャーミングな急須は香港で見つけたもの」
飲食という本来の役割から完全に逸脱するわけではなく、少しだけズラした解釈で遊ぶのが福田さん流の“見立て”。
「ひとしきりそれで盛り上がり、自然と深いおしゃべりに移行するのが理想です」
『クロワッサン』1101号より