【演目:家見舞】ちょっとお下劣だけど面白い。│ 柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
【演目】家見舞
あらすじ
職人の八五郎・熊五郎は、新居を構えた兄貴分に祝いの品を贈りたいと相談する。水瓶がないと知って瀬戸物屋に買いに行くが、良い品は高価で手が出ない。
安い物で妥協しようとするが、お互いに相手の懐を当てにしていたため、これまた買うことができない。
気落ちする二人の目に留まったのは古道具屋の店先の古い瓶。主人に値段を訊くと代金はいらないとのこと。喜んで水瓶として贈ると伝えると「それだけはダメだ」と言う。その理由は何と…。
水瓶に使えない理由は、まあ察しのつくかたもおいででしょうが、聞いてのお楽しみ…でもないか。ちょいと汚いお話です。けれどその汚い落語を下品にならないようにおしゃべりするのも芸のうち。
じゃあどうすればいいのかって? それはですね、この噺の最も面白いポイントが下ネタの部分にあるのではないって見抜くこと。
お金がないのに兄貴分に不義理はしたくない、という江戸っ子気質。もちろん美徳ではありますが、度を越せばおかしなことになっちゃいます。そこが一番面白いとわかればしめたもの。あとはちょっとお下劣な部分も〝彩り〞として楽しんでいただけるはずです。
それにしても落語に出てくる絵に描いたような江戸っ子、本当にうらやましいですね。気っ風がよくて、義理堅くて、でも人間くさい弱さが可愛い。
生まれも育ちも東京じゃない私が、演じている間だけは江戸っ子になりきって生きられる…。演者側の落語日和です。
『クロワッサン』1085号より
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