アントニオ猪木への愛を歌った、元妻・倍賞美津子の「いつも一緒に」【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
猪木への愛を歌った元妻の優美な名演。
プロレスラーのアントニオ猪木が2022年10月1日、心不全で亡くなりました。享年79歳。告別式ではおなじみの彼の入場テーマ曲「炎のファイター/Inoki Bom-Ba-Ye」が流れる中、参列者の「猪木コール」で霊柩車を送り出したそうです。
1977年、「アントニオ猪木とザ・ファイターズ」の名義で発売された「炎のファイター」には「元ネタ」が存在します。それはプロボクシング元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリの伝記映画『アリ/ザ・グレーテスト』の挿入歌「Ali Bombaye」。
猪木とアリの間には1976年6月に行われた伝説の異種格闘技戦を通じて交流が生まれ、その友情の証としてアリから授かった「Ali Bombaye」を自身の入場テーマ曲として改変したわけです。
そんな「炎のファイター」のカップリング曲は、当時猪木の妻だった俳優の倍賞美津子が歌う「いつも一緒に」でした。実はこちらも『アリ/ザ・グレーテスト』の挿入歌、ジャズミュージシャンのジョージ・ベンソンによる「I Always Knew I Had it in Me」のリメイクです。
「いつも一緒に」の日本語詞を手掛けたのは、なかにし礼。戦いに臨む夫の身を案ずる健気な妻、という設定の歌詞はいささか時代を感じさせますが、松竹歌劇団仕込みの歌声で猪木への愛を告げる倍賞の優美なパフォーマンスはそれを補って余りある素晴らしさ。いま、この機会にこそ聴かれるべき名演だと思います。
『クロワッサン』1082号より
広告