自身の〈鉛筆を入れる(=校正する)〉仕事について、牟田さんが決めていることがある。誤植や事実関係の確認は大前提だが、
「できるだけゲラに鉛筆を入れないこと。表記のブレも著者には理由があることがあります。なるべくその人にチューニングして文体を生かしたい。さわりすぎないように校正したいんです」
著者に“チューニング”するために、ゲラを読む前にはできるだけ前作やインタビューを読んでおく。著者の語彙や息づかいを自分の中に通したのち、向き合う。
〈著者はもっと自分の言葉に頑固であっていい。譲らなくていい〉その姿勢が著者や編集者からの大きな信頼を集めている。