「ケンカだって会話のうち」、高岡早紀さんと家族の距離感の正解。
撮影・宮川朋久 スタイリング・村上利香 ヘア&メイク・白川いくみ 文・室田元美
母と私と娘、ひとつ屋根の下。 女同士、ケンカだって会話のうち。
「10代からなぜか魔性の女と呼ばれて。いまだに不思議なんですよね(笑)。私が実は何を大事にしているかを知っていただきたくて、エッセイ『魔性ですか?』を書きました。中でも家族のこと抜きには、自分は語れないです」
成人して巣立った長男を除き、現在、高岡早紀さんは次男、小学生の娘、そして母との4人暮らし。
「離婚を選択した以上、家族を幸せにしなくてはという責任を感じてきました。ママと暮らせて幸せ、と子どもたちに思ってほしいので」
母と娘(高岡さん)とその娘。女3代の真ん中にいる高岡さん。娘とは数年前から、国内や海外へと2人だけで旅行に出かける。
「ホテルのプールサイドでくつろぐ私に、丁寧にマニキュアを塗ってくれるんです。いつの間に?と成長を感じます。男の子と違って、女同士は旅先でかわいいもの探しができるのも楽しくて」
子どもの頃の高岡さんは3人きょうだいの真ん中で、「甘えん坊だった」と回想する。
母のあとを追った子ども時代。 今は家族の仕切り役です。
「父が早くに亡くなった後、母は昼は花屋、夜はライブハウスの経営と働きづめ。よく私をライブハウスに連れて行ってくれました。きっと、置いて行かないでと私がダダをこねたんでしょうね」
現在は逆に、自宅でテキパキと家族を仕切る役。同居の母とはぶつかり合うこともたびたびだとか。ところが、離れて暮らす兄と妹が訪ねてくると、母はにこやかでうれしそうなのだ。
「それを見ると腹が立つんですよね(笑)。母にとって今の私は、うるさい娘。〝なんで醤油をここに置くの? なんで元に戻さないの?〟って。母は〝あ〜うるさい、やだやだ〟と言いますが、それも会話なんです。年を重ねた母になら、言いたいことを言っても逆に刺激になりますし、いろんな感情が芽生えるのはいいことなのかも」
仕事でドッと疲れた時、ふと一人になりたい時、心を慰めてくれるのは好きな植物を並べたテラス。「ここがあってよかった」と高岡さん。家族の中で自分も成長し、強くなったという。
「待てるようになりました。子どもの反抗期もありましたが、放っておいてほしいんだと思ったら、時間を与えます。そのうち〝お腹空いた〜〟とやって来ますから。〝あ〜もうバカ。でも可愛い!〟と、心の中でつぶやきます(笑)」
大切なのは、相手を信頼すること。
「〝信じてよ、ママ〟〝うん、信じるよ〟とうちではよく言っています。お互いに信頼があれば、多少ぶつかったって平気。家族って、そんなに難しくないんじゃないかな?と思います」
『クロワッサン』1050号より