運の強い人には理由があった。ウー・ウェンさんがさりげなく続けている、日々の習慣。
お金遣いや財布のマイルール、開運グッズ、縁起物など、真似したくなることばかり。
撮影・三東サイ 文・田村幸子
医食同源を心がけて、縁起物と毎日お正月気分で暮らしています。
北京で生まれ育ち、日本で暮らし始めて31年になるウー・ウェンさん。さぞ風水や気学を取り入れ、招福、開運が暮らしに根づいていると思いきや、
「ごめんなさいね。実は私、金運とか開運とか、あんまり信じてないんです」とささやくように笑った。
「私が考える金運を招く方法は、心も体も健やかであること。医食同源を唱える中国では、食べることがすなわち健康の源という考え方。健康ならば、一生懸命働いて富を得る。つまり金運に恵まれることにつながりますね」
そんなウーさんが心がけていることは、体温よりも冷たいものは口に入れないことだそう。
「暑い夏、キンキンに冷えたビールでのどの渇きをいやしたい。けれど体を冷やすのは万病のもと。暑い日こそ、温かいお茶を。発酵系の白茶は、体にこもった熱を逃がしてくれますよ」
古来、金運を招く食べものがある。
「それは餃子。中国の古いお金が餃子に似た形をしていたそうで、お正月にあたる春節には、餃子はかかせません。日本のお雑煮みたいなものね」
お正月といえば、主宰するクッキングサロンの正面にも、春節を祝う年画が常時飾ってある。また、自宅の玄関には黄色を基調にした絵画がある。
「気に入ったら、時季を問わずに飾ります。私は毎日がお正月気分だから」
それは好きで買い集めた骨董の器も同じ。縁起かつぎよりも「好き」を優先したものだから、ふだんから使う。
縁起といえば、2年前に25歳になった長女に、ジュエリーを贈った。
「中国では翡翠を女性が身につけると病や禍から守る言い伝えがあります」
金運は健康あってこそ、とウーさんの願いを込めた贈り物だ。
縁起のいい鳳凰、高貴な紫の器は、大事に使います
古代紫の銘々皿は花びらの形。「永樂家十五代善五郎の作です。紫は高貴な色で稀少ですが、しまい込まず普段使いに。食器は使ってこそ値打ちがあると思いますから」とウーさん。
縁起がいい鳳凰の絵柄の古伊万里は、「前菜を盛っても、餃子をのせてもおいしそうでしょう? 楕円のような形も気に入っています」。
自宅の玄関には、金運をもたらす黄色の絵が映えます
金運、幸運の神様は玄関から入ってくるそう。
「金運とか縁起とか、あまり信じていませんが、この黄色の絵はとても気に入っています。ぱあっと気持ちを明るくしてくれるから。七福神の布袋様のような長老の人形を対で飾るのは、中国の習わしです。めでたくて、ほっこりするでしょう? この飾りは季節によって変えますが、絵画はいつもここに飾ります」
和室には、縁起のいい金箔の鶴の掛け軸。365日掛けています
床の間のないシンプルな和室の壁には、鶴の群れが大空に舞う掛け軸。吉兆を思わせる金箔だ。
「これはお正月やお祝い事があるときに掛けるものだそうですが、私はいつも掛けています。サイズもこの部屋には大きいかもしれませんが、ひとめぼれ。気に入ったものは毎日眺めていたいから、時季は気にしません」
病魔や禍から守ってくれる翡翠。 娘に贈りました
幸運、福財を象徴する翡翠。中国では五徳(仁・義・礼・知・信)を高める宝石とされる。
「娘が健やかな日々を過ごせるように、と願いを込めて翡翠を贈ることにしました」。
オーバル型の翡翠を横長に位置するようにデザインしてもらい、長女の希望でプラチナの華奢なチェーンを選んだという。
「気に入って毎日、つけてくれています」
餃子は古いお金の形をしているといわれます。 1月にはこのお飾り
「これ、ちょっとかわいらしいでしょう?」とウーさんが見せてくれたのは、餃子の形をした、つるりとした手ざわりの磁器。
毎年1月になると、キッチンスタジオに掲げた年画の下に、ミニチュアサイズの中華蒸籠とセットで飾る。
餃子は中国の人たちにとっては、金運を招くソウルフードでもあるのだそう。
「水餃子が正式の食べ方です」
春節に貼る年画は一年中キッチンサロンに飾っています
春節のころ、幸福を招き、厄災をよける願いを込めて貼る木版画「楊柳青(ようりゅうせい)年画」は、17世紀中期に始まり、中国・天津の西部で栄えたという、日本の浮世絵のようなもの。
「蓮の花と鯉が描かれていて、縁起がいいでしょう。ほんとうは春節のときに貼るものだけど、私はずっとキッチンサロンの入り口近くに飾っています。一年中、お正月気分で気持ちが上がるから」
『クロワッサン』1048号より