くらし

タサン志麻さんの、何でも手作りするフランス流の住まい。

  • 撮影・青木和義 文・黒澤 彩
 ガス台の周りにあまり物を置きたくないこともあって、調理道具は最小限。収納もそれほど多くはないけれど、これで充分だそう。
古いキッチンを撤去した状態。壁を補強するところから自分たちで作業をした。

昨年、キッチン背面の壁と床がかなり傷んでしまっていることが発覚し、一念発起してすべて取り換えることに。隅々まで採寸し、業務用のラインアップの中からちょうどいい幅のシンク、ガス台、調理台をインターネットで購入した。そのとき、タサンさんは出産のため入院中。業者に頼らず、ロマンさんと友人で、配管からガス台の設置までを完了したという。

「夫はフランスにいた頃、電気工の仕事もしていたので配管などはお手のもの。でも、フランスでは、誰でも自分でやるのが当たり前みたいです」

【家になじむパーツを選ぶ。】右・調味料の棚はキッチンの雰囲気に合わせてアンティークの素材で手作り。左・もとからあった吊り棚と色を揃えて、新たに棚板を追加。違和感なくなじんでいる。
【床下の空間を収納に活用する。】床板の下がぽっかり空いていたのに目をつけたロマンさん。木の箱をはめ込んで、床下収納を作った。瓶ものも縦に入れられるくらいの大容量で、食料庫として重宝している。

思い切って変えるところは変える潔さも大切。

がらりと変わった場所といえば、丸ごと取り換えた洗面台と、今年になって手を入れた庭。

「洗面台のコーナーは以前の面影がないくらい、全部新しくしました。庭は草むしりが追いつかないので、庭師の方にお願いして石を敷いてもらったら、見違えましたね。少しずつ好きな植物を植え始めたところです」

【サイズが合えば市販品を活用。】ロマンさんが採寸して、自分で設置した洗面台。小ぶりな洗面ボウルと台のセット、収納棚を〈イケア〉で購入。市販品のなかからサイズの合うものを選んで組み合わせている。
【大変なときはプロに依頼する。】初めは自分たちで挑戦したものの、どんどん生えてくる雑草に音を上げ、ここだけはプロの手を借りることに。無理せず楽しんでできる範囲のことをすればいいと割り切った。

古民家ならではの魅力はそのまま残していきたい。

「日本家屋って、よく考えられているなと思います。この家は相当古いんですけど、色あせない魅力もたくさんあって。そういうところには手を加えずに使っています」

あまりに傷んでいたり、使いにくい部分は順番に直していきたいけれど、住んでみて初めて気づいた造りのよさも。古民家を住みこなすことを楽しんでいる。

【貴重なガラス窓は木枠のままで。】今は製造されていない、模様入りのすりガラス窓は夫婦のお気に入り。レトロな趣を大事にするため、すきま風が入るのには目をつむり、木枠のまま使っている。
【意外な収納力で家具がいらない。】階段下や、廊下の突き当たりなど、意外なところに収納がたっぷり設けられているのを発見! これをフル活用しているので、収納のための家具を買う必要がない。

リフォームを急がずに今後の楽しみをとっておく。

2階には子ども部屋と夫婦の寝室、広いベランダのある多目的部屋がある。どの部屋も、まだこれというリフォームはしていない。

「子どもは小さいし、寝室もとくに不便はないのですが、これからどんな部屋にしようと思い巡らせるだけでワクワクします。すぐに答えを出さずに、ゆっくり考えたいと思っています」

【フローリングマットを仮置き。】シンプルなベッドを置いた寝室と多目的室には、手軽なフローリングマットを敷いている。これが完成形ではないので、いつでも変えられるような敷くだけのタイプが便利。
【0歳時から寝室は別々に。】フランスでは、子どもの独立心を養うため0歳のときから子どもと大人の寝室を分けるそうだが、タサン家もそのスタイル。部屋数の多い日本家屋が暮らし方にも合っている。

タサン志麻(たさん・しま)●フレンチのコックとしてレストランに勤務後、2015年にフリーランスの家政婦に。著書『ちょっとフレンチなおうち仕事』など。

『クロワッサン』1030号より

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