独り言が多いのは、ラジオが原因!?│ しまおまほ「マイリトルラジオ」
「あ、ヤバい! 忘れ物した」
「間に合うかなー、走ろうかな…」
わたしに独り言が多いのは、ラジオを聴いているせいだろう。
家でひとり過ごす時間は、ラジオが話し相手。リスナーメールにウンウンと相槌をうったり、意外なエピソードにエー!と大声を出したり。もう何十年と続く習慣だから、今更直すことはできない。
問題は外出時の独り言。道ゆく人から「これから雨降るって」という会話が聞こえれば「うそっ!?」と頭で考える前に反応してしまうし、商店で馴染みのラジオ番組のオープニングが聞こえれば「ああ、もうそんな時間か…」といつも通りに呟いてしまう。
もちろん、声のボリュームは抑えめにしているが…。
最近は聞こえてしまっていてもいいかな、と開き直り気味。
少し前に広汎性発達障害の男性が主人公のドキュメンタリー映画を観た。タイトルは「だってしょうがないじゃない」。主人公はパッと見れば〝普通″の中年男性。でも、ブツブツ呟きながら歩いていたり、同じ道を何度も行き来したり。他人はその言動に用心が必要だと思うだろうが、日々の生活を追った映像を観た観客は彼の愛らしいキャラクターにいつの間にか癒やされていた。
そこでわたしは思った。黙って何を考えているかわからない方が怖くないか?と。以来、独り言の蛇口をちょっと緩めることにした。
考えてみれば、ラジオだって立派な“独り言”のメディアなんですよねえ。
しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。新刊は『スーベニア』(文藝春秋)。
『クロワッサン』1029号より
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