くらし

『カラスは飼えるか』著者、松原 始さんインタビュー。「カラスのイメージが変わるとよいな、と」

  • 撮影・黒川ひろみ(本・著者)

「カラスのイメージが変わるとよいな、と」

松原 始(まつばら・はじめ)さん●1969年、奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。東京大学総合研究博物館特任准教授。研究テーマは、カラスの行動と進化。著書に『カラスの教科書』ほかがある。

カラスと聞いて思い浮かべるのは? ホラー映画で曇り空をバックに鳴いているカラスなんかは不気味な演出のもはや定番だ。
動物行動学が専門の松原始さんは、カラスに魅せられて、長年、生態を研究してきた。ウェブ連載をまとめた本書は、鳥類を主とした多岐にわたる生き物たちについてのエピソードを紹介しているが、やはり最後にはカラスの話に落ち着くのもむべなるかな、なのである。

ワシや鷹、フクロウに渡り鳥、今や絶滅してしまったドードーなど。さまざまな鳥にまつわる軽妙な語りを読むうちに、生き物と人間、それを取り巻く環境といったことを、自然と考えさせられる。が、カラスについてはとにかく、おもしろエピソードが満載なのだ。たとえば、そのけんかっぱやさ。

「山間に調査に出かけて、鳴き声を車上からスピーカーで流してカラスを呼び寄せたんです。鳴き声で近くに来ているのがわかったのに姿が見えない。おかしいと思っていたら、道の向こうでいきなりボンッていう音が3回くらい聞こえて。『うん?』ってのぞいてみたら、カラスが1羽、カーブミラーに飛び蹴りをくらわせてました」

縄張り意識の強いカラスが鏡に映った己の姿を別の個体と思い攻撃していたというわけだが、想像するだにおかしみのある光景だ。

そして、公園などで何十羽と群れているカラス。なんとなく怖いイメージがあるけれど……。

「公園なんかで何十羽もわちゃーっていたら、たいてい若者ですね。暇に飽かした高校生がコンビニ前でたむろしているみたいなもの。その中でナンパしてペア作ったりしますから。この間は、オスがメスに『はい、あげるっ』てエサをさしだしたら、『いらない!』とそっぽむかれてました。『そんなこと言わずにほらほら』ってがんばってるのに、相手にされてなくて」

公園でカラスを眺めていると、いろいろな顔を見せてくれるから面白い、と松原さん。

ヘタレで甘えん坊……。意外な、カラスの素顔。

タイトルにもなっている「カラスは飼えるか」に対する答えは、野鳥を捕獲して飼ってはいけない、という理由でノーなのだという。けれど、事情によりカラスを飼っていた人から聞いたというこんな話も。ひなから育てると人慣れするが、それがかなりな甘えん坊っぷり。お客が来るとつんつんしてかっこつけるくせに、帰ったとたん「頭かいて〜」とデレデレ甘えてくるのだとか。いたずらして叱られ、ベランダに閉め出されたカラスが、「ごめんなさいごめんなさい入れてください怖いよう」状態だったという、本書のエピソードもまた秀逸だ。

鳥たちの含蓄ある話を読み進めると合間に語られる、おちゃめなカラスの姿。いつしか、思わず「かわいい……」とつぶやいている自分がいるかも。それこそ、松原さんの思うツボ。ページを繰りながら、どうか、楽しく笑ってしっかりツボにはまってください。

鷹の速さやフクロウの平たい顔の秘密など、身近な鳥の秘密に迫りつつ、カラスの面白さを余すところなく伝える。 新潮社 1,400円

『クロワッサン』1027号より

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