くらし

心と体の専門家に聞いた、香りが心身にもたらす効果【降矢英成さん×小高千枝さん 対談】

  • 撮影・MEGUMI 文・板倉みきこ

ホリスティック医療では、 あらゆる視点から人間を診ていく。

小高 ここで改めて、ホリスティック医療とはどういうものか、ということを教えていただけますか?

降矢 全体的な視点に立って患者や人間を診る、というのが基本です。現代医学では“異常なし”と診断されても、不調や疲労感などが続く、いわゆる慢性症状の治療には、この視点がとても大事だと考えています。何か不調があった場合、臓器だけでなく全身を診る。そして体だけでなく、心も含めて診る。こうすることでより広い視点が得られます。さらに、病気になっている人の周りにある環境も含めて診ることも必要です。

小高 それは、私が行う心理的なアプローチにも通ずるものがあります。クライエントの心を乱す原因を探る時、個人の心理的背景だけでなく、健康状態や、取り巻く環境、社会情勢や自然などのもっと広いくくりでの環境など、様々な要因から紐解いていきます。俯瞰力を身に付けることが、心理的問題を解く鍵になると考えています。

降矢 全体的にその人を診る、ということですね。ホリスティック医療の考え方には、物質的な体(ボディ)、感情や知性などの精神的機能を有する心(マインド)、そして体の活動や心の働きを司る魂や命(スピリット)の3つがあり、それぞれの影響や関連性を認識しよう、という基本があります。

小高 現代医学が一番苦手とするのが、心や魂の捉え方でしょうね。

降矢 しかし、必ずあるものですし、世界にはアーユルヴェーダや東洋医学など、人間を全体で診ようとする医学は長い歴史を持っていますから、その視点を無視するのもおかしな話です。「魂」を、心の背後にある、生きる上での価値観、信念や尊厳と捉えると理解しやすいかもしれません。

小高 私も臨床を続けていて、言葉にはできないエネルギーの変化をクライエントから感じることがあります。こう言うと、霊的な力があるように誤解されますが、もっと現実的な話です。

降矢 エネルギーの話をしだすと、怪しい人だと思われるので、充分気をつけなければいけませんね(笑)。私は、現代医学の大切さも充分理解した上で、それだけではフォローできないものを取り入れたいと考えています。今回アロマセラピーを取り上げましたが、それも、ホリスティック医療のうちの一つの治療法にすぎません。そもそも、クリニックは単に治療技法を提供する場ではないのです。たくさんの視点や治療法があることで、自分を改めて見つめる機会が得られるという点が大事です。そこで患者に意識改革が起こり、アロマや鍼灸などの治療が加わり体質を変えていくことで、心の気質の調整を施すことができるんです。医師だけでなく、様々な治療法の専門家がチーム一丸となって、治療を行っていきます。ただ、患者さんも自分の問題だと自覚して、主体的に治療に関わっていくことが求められます。

小高 心理カウンセリングへ来られる方にも、専門家に相談すれば、魔法にかけられたように一瞬で良くなる、と思っている方も多い傾向があります。だから、「改善はあなたと私、二人三脚でやっていくんですよ。でも、心の問題と向き合うのは、あなた自身なんですよ」とお伝えすることも。

降矢 考え方は同じですね。

投薬だけに頼らない、様々な治療法を実践する降矢さんのクリニック。病気の治療だけでなく、疾病予防、健康増進にも力を入れ、食事指導などを行う場合もある。

アロマセラピーで使われる精油。

症状に合わせて処方されるメディカルハーブ。

カラーセラピーで使う色鮮やかなボトル。

漢方の生薬やメディカルハーブのサンプルは、患者へ説明する際に使われる。

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