去る4月10日、大林宣彦監督がこの世から旅立った。コロナウィルスがなければ、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の劇場公開日であった。2016年夏、『花筐/HANAGATAMI』の撮影前日に肺がんが判明し、余命半年と宣告されながらも映画作りの歩みを止めず、『花筐』の後、取り掛かったのがこの『海辺の映画館―キネマの玉手箱』である。
驚いたのは商業映画デビュー作『HOUSE ハウス』(’77年)のキッチュでアバンギャルドな作風が色あせず、さらに過激なこと。書き割りのような背景に、チープな合成を施した大林カラー全開のファンタジーの世界。映画とはどんな悲惨なことが起きてもそれは夢、映画館を出れば現実に戻れる。ならばその力を信じ、今宵限りで幕を閉じる尾道の映画館の最後の上映会「日本の戦争映画大特集」に立ち会い、一緒に旅してみないか。そんな大林監督の目論見による上映時間179分!