リモート出演番組のホッとする笑いを楽しむ。│ しまおまほ「マイリトルラジオ」
この原稿が世に出る頃、世の中はどうなっているかしら。想像もつかない……!
もしかしたら、自分が渦中にいるかもしれない。身の回りの人が、大切な人たちが……。
コロナウィルスによって、本当に世界がガラッと変わってしまった。執筆している4月中旬現在、わたしがレギュラー出演するTBSラジオ「アフター6ジャンクション」はパーソナリティの宇多丸さんも事務所からのリモート出演となった。普段は防音のため閉められている厚く重いスタジオのドアも、換気のために開け放たれているそうだ。スタジオに入る人数も当初の4名から2名に減ったらしい。月1度のレギュラーであるわたしも、今後はテレビ電話による出演予定だ。
……緊迫した状況が続いているけれど、リモート出演は聴いていてちょっと面白い。部屋の壁紙を突っ込まれたり、親御さんが乱入したり。ハプニングから新しいスターが生まれる予感も。緊張感と在宅による緩みが妙な化学反応を起こしている。困難な局面に、ホッとした笑いをくれるから、やっぱりラジオが好きだなあって思える瞬間だった。
長い戦いになるとしたら、リモート技術が上がり、もっと聴きやすい放送になるかもしれない。そうなっても、出演者は無機質なリモート部屋なんて用意せず、キッチンから、自室から、居間から……生活感のある場所にマイクを置いて欲しいなあ。
そういうぬくもりを、今一番わたしは感じたいのです。
しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。
『クロワッサン』1021号より
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