何か今から始めないと、することがなくなる――Y・Tさん(主婦)
文・澁川祐子
何か今から始めないと、することがなくなる――Y・Tさん(主婦)
いまでこそ当たり前になっている大学の社会人入学。この記事を読み、日本で最初に社会人入学制度を設けたのが、立教大学法学部だったことを初めて知りました。
今号では、巻頭インタビューにも当時の立教大学法学部部長が登場し、制度について語っています。それによると選考は、書類選考ののち、英語と論文の筆記試験、面接を実施。結果、34名が合格を果たし、うち23名が女性でした。そしてこの記事では、合格した女性5名に取材しています。
結婚して3歳の子どもがいる29歳、実家の家業を手伝っている夫婦2人暮らしの30歳、新聞社に勤務する独身の30歳と、取材に答えている人の境遇はさまざま。
そのなかで目にとまったのは、6歳の男の子、3歳の女の子という2人の子どもの母親である33歳の主婦。下の子の手がかからなくなってきたときに考えたのが、名言にある〈何か今から始めないと、することがなくなる〉という思いでした。
子どもはいつか、自分のもとから巣立っていく。その先も人生が続くことを考えると、いまから何かはじめないと――。40年あまり前の話ですが、その心境はいまの女性たちにも理解できるのではないでしょうか。
創刊当初のクロワッサンを読んでいると、仕事にしろ、趣味にしろ、女性たちはみな自分の世界を持とうと奮闘していたことがわかります。そんな女性たち1人ひとりの歩みが、ゆっくりながらも少しずつ社会を動かしてきたのではないか。そんな思いから、今回は1人の女性の切実な胸の内を取りあげてみました。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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