金継ぎで好きな器をずっと使い続ける。【スタイリスト・矢口紀子さん】
暮らしや家族の記憶とともにある、長く親しんだ〈我が家の道具〉。自分で直してとことん付き合う、実践例の紹介です。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・松本あかね
好きでよく使う器ほど欠けるもの。金継ぎをしたら、使用頻度がさらに増えた。
きっかけは知り合いに誘われた金継ぎ教室。そこでは合成漆を使う簡易な方法だったため、接着部分のシンナー臭が強いのに驚いてしまったという。初めての体験はそんなふうだったけれど、自分で器を修繕するのは「いいものだな」という感触は残った。そこで、今度はにおいがなく、熱にも強い本漆を使った金継ぎに挑戦しようと、東急ハンズでキットを購入したのが始まり。
本漆を使った継ぎは、1回の乾燥に1週間、1つの修繕に2、3カ月かかることもざら。それでも「家でやるからこそ気長にできる」とおおらかに構え、3つ4つたまったら手を付けることをルールに続けてきた。
「欠けたところがそのままだと、使うたびに残念な気持ちに。それが直してみるとやっぱりいい。金が入ることで生き返ったようになるんです」
家でお茶を飲んだり、料理を盛り付けるとき、自然に手が伸びるのは、直した器のほうなのだそう。
「手をかけた分、使いたくなるんでしょうね。愛着が湧くって、こういうことなのかなと思います」
「ほったらかし」が一番!?
家でやるから、気長にできる。
・矢口さんの道具箱・
最初はキットの購入が近道。自分らしい道具も買い足して。
『クロワッサン』1018号より
広告