くらし

できたてホカホカのおにぎりを多くの人に届けたい。ONIGIRI GOが目指す未来の食のかたち。

東京・浜松町の駅にほど近い通りに、2020年2月にオープンしたばかりの小さな店「ONIGIRI GO(オニギリ ゴー)」。コーヒースタンドのようなシンプルなこの店が提案するのは、王道のおいしさを追求しながらも、未来を感じさせるおにぎりである。
  • 撮影・黒川ひろみ 文・澁川祐子
池野直也(いけの・なおや)さん●1981年京都府生まれ。2007年松下電器産業(現パナソニック)に入社し、生産技術研究所に配属。6年間の勤務を経て、経営学を学んだ後、ライフソリューションズ社の経営企画部所属。2017年よりGame Changer Catapultに参加し、2019年より「OniRobot(オニロボ)」プロジェクトリーダーに就任。

「生産技術の研究所で働いていた自分が、まさかおにぎり屋をやるとは思ってもいませんでした」

そう微笑みながら語るのは、「ONIGIRI GO」を切り盛りする店長の池野直也さんだ。コンクリートの壁と木製のインテリアで統一された店内。おにぎりらしきものは見当たらないが、それもそのはず、「ONIGIRI GO」は作りおきを一切せず、できたてのおにぎりがテイクアウトできる新しいスタイルのおにぎり店なのである。

客は、まず専用サイトで事前に注文する。そして指定した時間に店舗に行くと、できたてほかほかのおにぎりが用意されているという仕組み。現在は直接店舗での注文や現金払いも受けつけているが、将来的にはすべて事前注文、キャッシュレス決済を目指しているという。

スマホに最適化されたサイトから具を選び、
受け取り時間を指定して注文。
事前決済していれば、 QRコードを読み込んで受け取り完了。待ち時間はゼロだ。

注文が入ると、システムが算出する最適なタイミングでおにぎりを作り始める。といっても手で握るわけではない。ご飯を機械にセットすると、すぐさま三角に整形されたおにぎりが出てくる。それを用意しておいた海苔と具材の上にのせ、海苔をくるりと巻いて袋に入れればできあがり。1個を作るのに、15秒もあれば十分だ。

これなら特段、調理の技術も必要ない。それが冒頭の「まさか自分が」という池野さんの発言につながる。

狙うは、年間約80億個のおにぎり市場。

「ONIGIRI GO」は、じつはパナソニックの新規事業を創出するプラットフォーム「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」で進行しているプロジェクトの1つだ。

パナソニックがおにぎり店の運営に乗り出したのは、もとはおにぎりを自動で作るロボット「OniRobot(オニロボ)」を開発したのがきっかけだった。その技術を生かして、事業を行うためのプロジェクトが始動。2019年8月からリーダーを務めることになったのが、研究所に入社した後、経営企画に転じた池野さんであり、その実証実験を行っているのが「ONIGIRI GO」なのだ。

約7坪と店舗はコンパクトだが、これまでの実証実験の結果を踏まえて立地にはこだわったという。

「日本では米の消費量が年々減っていますが、それに反しておにぎりの需要は伸びています。現在、年間約80億個のおにぎりが国内で消費されていますが、おにぎりの専門店はわずか800店ほど。ですから、お客さまに価値を認めてもらえる店を作ることができれば、その市場を取りに行けると思ったんです」

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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