くらし

できたてホカホカのおにぎりを多くの人に届けたい。ONIGIRI GOが目指す未来の食のかたち。

  • 撮影・黒川ひろみ 文・澁川祐子

プロジェクトのメンバーは、30代から40代の4人。開店に至るまで、名店と呼ばれる店から居酒屋まで、おにぎりをいくつも食べ歩いた。幾度か、期間限定の店舗も試してみた。そして気づいたのが「できたての温かさ」が最大の武器になるということだった。

「メーカーだと、どうしても技術をどう使うかと考えてしまいがちです。どれくらいの圧力で握った、どの程度のやわらかさならおいしいか。当初はそればかり考えていましたが、お客さまの声を拾っていくと、じつは握り方よりも、温かいことが一番求められていたんです」

作りたてを提供するので添加物は一切なし。厚みがあって香りがよく、時間が経っても手にベタつかない海苔も評判。
おにぎりにおける「温かさ」のニーズの高さに驚いたという池野さん。

作りおきしたおにぎりは、冷たくなって水分が飛んでしまう。でも、できたてならば温かいのはもちろん、乾燥もしない。しかも保存料などの添加物も使わずに提供できる。いいこと尽くしである。

では、どうすればできたてを提供できるか。そこで辿りついたのが事前注文システムだった。

おいしくて環境に良い、“三方よし”のシステム。

事前注文のメリットは、できたてを提供できる以外にもいくつかメリットがある。まず、注文や決済をデジタルで行うことで人件費を抑えられること。そして、フードロスも抑えられることだ。

「ONIGIRI GO」のキッチンには、1升炊きの炊飯器がずらりと並んでいる。注文に応じ、米を炊く量を細かく調整できるため、廃棄も限りなく減らすことができる。その結果、よい材料を使いながらも値段を安く提供できる。「ONIGIRI GO」のおにぎりは1個160〜190円と、コンビニと比べても遜色ない価格だ。

「お客さまにとってもうれしいし、環境にもやさしい。それに店舗運営にもいいと、このシステムは“三方よし”なんです」

だが、実際に開店にこぎつけるのは一苦労だった。すべてチームで相談しながら決めていったからだ。

不動産屋をまわって物件を探し、物件が決まれば内装を考える。そして肝心の食材選び。米は、炊飯器をずっと開発してきた「ライスレディー」と呼ばれるメンバーが「おにぎりなら、この米がいい」と鶴の一声で決まったが、海苔や具材は気になるものはすべて取り寄せ、試食した。今なお、さらによいものがあれば変えようと、日々リサーチを怠らない。

「お客さまの声を聞きながら、味もバリエーションもどんどんバージョンアップしていきたいと思っています」

そう池野さんが語るように、オープンしてからわずか2週間のうちに新メニューを追加。従来の北海道紅鮭ほぐし、ごま昆布、おかか佃煮、博多辛子高菜、紀州南高梅に加え、ツナマヨネーズ、とりそぼろの2品が登場している。

開発するのが技術からビジネスに変わっただけ、と池野さん。今はビジネスを1から作り出すのが楽しいと語る。
シンプルでナチュラルな店舗デザインもみんなで考えた。脱プラスチックにも取り組んでいる。

「近所で働いている人など、毎日来ているリピーターが10人以上います」と、手応えを感じている池野さん。現在お店の広さは約7坪あり、常時1〜2人で運営しているが、ゆくゆくは「1坪を1人で運営する形態をフランチャイズ化して、温かいおにぎりを1人でも多くの人に味わってほしい」と意気込む。

そんな池野さんが作ってくれたおにぎりは、ごはんと海苔の香りがふんわりと広がり、一口食べるとほろりと崩れた。ささやかな幸せを、より多くの人に。小さな店から始まった試みは、新たなおいしさの革命を秘めている。

ONIGIRI GO
東京都港区浜松町2丁目2-9佐藤ビル1F
営業時間:平日 7:30 – 15:00 定休日:土日祝

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