くらし

漢字について、ゆっくり話そう。【笹原宏之さん×篠宮 暁さん 対談】

普段何げなく扱っている漢字。その魅力や日本人との関係についてあらためて考えてみませんか。
  • 撮影・青木和義 スタイリング・山崎康洋(篠宮さん) 文・嶌 陽子

漢字にニュアンスや思いを見出すのは 日本人独特の感性です。(笹原さん)

書けるようになると気持ちがいい。いつか全漢字を制覇したいです。(篠宮さん)

(左)篠宮 暁さん お笑い芸人(右)笹原宏之さん 早稲田大学社会科学総合学術院教授

漢字対談の1回目に登場するのは、漢字研究の第一人者である言語学者の笹原宏之さんと、お笑いコンビ「オジンオズボーン」の篠宮暁さんです。篠宮さんの“秒で覚える漢字”は「独特の唱え方が面白くて耳から離れない」「難しい字が書けるようになる」などと巷でブレイク中。笹原さんは、一体どう受け止めたのでしょうか?

笹原 篠宮さんの“秒で覚える漢字”、テレビで見て知りました。私が教えている早稲田大学にも、篠宮さんの動画を見て「鬱」っていう字を覚えたという学生がいましたよ。

篠宮 いやあ、それはうれしいですね。

笹原 私は漢字の成り立ちについても関心があるんですが、実は成り立ちがよく分からない字は多い。はっきりしない成り立ちを根拠に漢字を覚えるより、篠宮さんのように形で覚えるのも悪くないですね。

篠宮 ありがとうございます。よかった。今日は先生に叱られるんじゃないかと思ってドキドキしてたんです。

笹原 漢字ってなんだか肩肘張って覚えなくちゃみたいな雰囲気があるでしょう。篠宮さんみたいな楽しい人を通じて皆がもっと漢字に親しみを持ってくれたらいいですね。今、レパートリーはどれくらいあるんですか?

篠宮 150くらいですね。自分なりに覚えやすい方法で作っています。だから書き順がめちゃくちゃなんです。

笹原 実は漢字の書き順ってあまり決まっていないんですよ。

篠宮 えっ、そうなんですか?

笹原 国が決めてるわけでもなく、昔からいろいろな書き方をする人がいた。だから、さほど気にしなくて大丈夫です。

昔から「鬱」は書けない漢字。「林四郎」でごまかす人も。

「鬱」は、中世から様々な略字が考えられてきた。上はJISの第1水準にある俗字。だが「鬱」が最も「鬱っぽく見える」とよく使われ、常用漢字に。

篠宮 そもそも漢字の勉強を始めたのは漢字能力検定(漢検)1級を取ったらテレビのクイズ番組に呼んでもらえるかもという、不純な動機からだったんです。

笹原 初めて“秒で覚える漢字”を考えたのはどの字だったんですか?

篠宮 「鬱」です。その時は書き方を覚えてもらおうという意図はなくて。こんな深刻な文字でふざける、というギャグの一環でした。

笹原 難しそうな漢字でも、こんなに遊べるんだよっていう、一種のパロディだったんですね。

篠宮 動画を公開後に鬱病の人からメッセージをもらったんですよ。僕の動画を見て、鬱になっているのがバカらしくなってきて、明るくなったって。

笹原 精神療法のような効果もあったとは! 漢字の新しい局面を見た気がします(笑)。「鬱」の字は、10年前に常用漢字に入れるかどうか、私も委員だった委員会で議論したんです。難しすぎるという声もあったけれど、今の時代、パソコンでは皆使っているからということで、入れることになった。

篠宮 簡略化した字もあるそうですね。

笹原 江戸時代にも十数画の略字が使われていましたし、中世の人も相当苦労したみたいで、縦に平たく「林四郎」と書いてごまかす人もいました。俗字の「欝」もあります。常用漢字の制定委員会でもいくつか略字を提示したんですが、「なんだか鬱っぽくない」ということで却下され、29画もある「鬱」が採用されました。

篠宮 もしもその時、先生が略字を猛烈にプッシュして、そっちが常用漢字になっていたら、今の僕はいないということですね(笑)。

一度聞くと、耳から離れない。

篠宮さんの”秒で覚える漢字”は独特の発音や節回しが特徴。一度聞くと耳から離れず、クセになる。篠宮さんのツイッターやYouTubeで見られます。

秒で覚える漢字(1)うつ

憂鬱な気分も消えてくる。
1.キカンキワ、
2.キョウ、
ワチャ、ワチャ、ワチャ、ワチャ、
ヒミー。
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