くらし

青木さやかさん「私の出費、何がムダ?」。出費のクセに潜む、節約の敵とは。

  • 撮影・青木和義 イラストレーション・イオクサツキ 文・板倉みきこ
「うわ〜これも ダメな買い物だ」(青木さん)「買うものに心が乗ってませんね」(八ツ井さん)

八ツ井 では、日々の青木さんのお金の使い方、流動費の流れを具体的にチェックしていきましょうか。

青木 節約できる部分ってことですよね。私、家計簿もつけていないんですが、それでもわかりますかね。

八ツ井 大丈夫ですよ。でも私自身、節約という言葉は個人的に苦手です。基本的にお金を使わない技術を追求すると考えが縮こまっていき、かえって続かない人も多いと思うんです。

青木 そうですね。私も苦手です。

八ツ井 私はただ支出を減らすのではなく、自分が幸せになれる、正しいお金の使い方を身につけてほしい。お金は、“使う”か“貯める”かの2つしかありません。使うのにも2つあって、不要なものを買ってしまった“無駄遣い”と、必要なものを買った“ちゃんとした買い物”です。無駄遣いがなくなればちゃんとした買い物だけが残り、その結果「節約」と同じ効果が生まれます。

青木 それなら続けられそうですね。

八ツ井 家計から無駄な支出を減らすには、自分の買い方のクセを把握するのが近道。お金の使い方は、その人の価値観、生き方が反映されているので、たとえば食べることが大好きな人は食費がかかるでしょう。他人は無駄遣いに思うかもしれませんが、本人が幸せになる使い方ならいいと思います。

青木 だいぶ気が楽になりました。

八ツ井 今の青木さんの課題は、自分のお金についてわからないことが多いこと。この「わからない」が、いらない不安を生んでしまいます。もっとお金と仲良くなってほしいですね。

青木 仲良くですか〜。私、30歳まで極貧だったんですよ。でもパチンコとかギャンブルが好きで、借金までしていました。30歳で急に売れだして、想像以上の金額をいただいて、お金の使い方がさらにわからなくなってしまったんです。今の収入は30代の頃よりだいぶ減っているのに、何にどう使っているのか、よくわからないままです。

八ツ井 買い物は、大切なお金を手放し、何かと交換する行為です。お金の使い方にその人の生き方が反映されると言いましたが、何に使っているのかもわからない状態では、お金だけでなく、青木さん自身の人生まで疎かにしているように感じてしまいます。

青木 うわ、耳が痛いです〜。

八ツ井 お金と仲良くなれば大丈夫です。お金が偉いわけではなく、私たちの分身みたいな存在と考えて。“お金さん”と呼ぶと、親しみが持てますよ。

青木 お金さん? 面白い言い方(笑)。でも、私が動物を“動物さん”と呼ぶのと同じかも。確かに、“さん”づけすると仲良くなれそうな気がしますね。

「もっとお金に 触れてください」(八ツ井さん)
「お金と仲良くなる、という考えは初めて」青木さん

数枚のレシートを見直すだけでも、買い物のクセと直すべき点が判明。

八ツ井 さあ、買い物のクセを知るために、レシートを見ていきましょうか。
(八ツ井さん式のレシートチェック方法の詳しい説明は、この記事の最後に)

青木 お財布に数日分は入っているかな。このレシートは、昨日友だちと服飾雑貨店に入って、その場の勢いで買ったお揃いの服と、バッグ。

八ツ井 良い買い物でした? 心から満足していますか?

青木 え、うーん、どうだろう。お揃いのパーカは、一年じゅう使えるからまあいいか、という感じ。バッグは、使い勝手がいいかなと思ったけど、家に帰って改めて見たら、いらないかもって感じたので、ダメな買い物ですかね。

八ツ井 買ったその日に既に満足していない買い物からは、青木さんのよくないパターンが見えてきそうです。パーカは、青木さんが好きで買ったというわけでもなく、使えるからいいか、と後付けで理由をつけていますよね。

青木 そうですね〜。ノリで買ってしまった、ダメな買い物かも……。(次のレシートを出しながら)これは、普段使っている駐車場がいっぱいで、高い駐車料金のところになってしまったレシート。全く満足していませんね。

八ツ井 それは運、不運が関係しているので、ダメなお金の使い方にカウントしなくていいですよ。

青木 これはお香と、テレビにかける布を買いました。お香は満足です。毎日使っていますし、生活に欠かせないもの。布は、すごくいいと思ったんですけど、家でかけてみたらなんだか合わなかったので、判定は微妙です。

よい買い物だったと青木さんが即答したお香。
テレビにかける用に買った布は少々不満。が、その不満は次回に生かせばOK。

八ツ井 なるほど。でもその失敗は目利きの問題なので、もう少し吟味していけばよい買い物に変わりそうですね。

青木 これは、舞台を見に来てくれて、お土産をくださった友人におごったランチ。こっちは知人への誕生日祝いと、後輩の出産祝い。これは子どもを預かってくださるお宅へのお礼のお菓子代。

八ツ井 次々出てきますね。

青木 私、お礼の買い物が多いんですよね。何かしていただいたら、もらいっ放しにできない性格で……。半返しの美学もあって、出産祝いでいただいたものを全部調べ直して、すべてに半額の返礼品を買い求めたくらいです。

八ツ井 交際費の出費がかさみますね。

青木 でも、必要経費と思っています。犬や猫の保護ボランティアをしていますが、けっこうな寄付金をいただくとそのまま受け取れません。個人的にお礼の品を返さないと気が済まないんです。

八ツ井 お礼は大事だとは思いますが、お礼の気持ちより義務感が強くなるお返しは、考え直してもいいかもしれませんね。もちろんケチになる必要はありませんが、かといって大盤振る舞いする必要もないと思います

青木 確かに、そうかもしれませんね。

八ツ井 青木さんのお金の使い方のクセは、人からの好意を得るためには、“自分がお金を出す”のが前提になっているという気がします。もっと受け取り上手になってほしいですね。また、「いただいたものには半返し」などとルール化すると、それが大義名分になってしまい、青木さんの心が乗った買い物にならないことも。「お返しをしなければ」ではなく、「あの人が喜びそうだから贈りたい」と青木さんの気持ち主導の買い物をしてほしいです。あと、自分自身を喜ばせる買い物をもっとしてほしいですね。“お金さん”は、青木さんを喜ばせるためにやって来ているのに、人のためばかりに使われていては“お金さん”もかわいそうです。

青木 自分のための買い物ってほとんどしていないですね。お礼の品をよく買っているな、とうすうす感じていましたけど、改めて偏りに気づきました。

八ツ井 そこを変えていきましょうか。お香の話の時は即答でしたよね。自分の気持ちがズシッと入った、心に必要な買い物は、買う理由も、良い買い物だったかどうかも即答できるんです。

青木 インテリア関連は大好きです。あとは、娘に対しては当然ですけど、愛猫やボランティアに関わる出費も必要なものだと思います。

八ツ井 そうですね、ただ「買うべき」「買わなければ」という義務ではなく、「買いたい」という、心のときめきを基準にして買うことを意識してください。そして毎回、本当に自分に必要なものか、買う瞬間に自問自答をしてみるとダメな買い物が減ります。それだけでお金との付き合い方が変わり、無駄な支出が減り、生き方も変わりますよ。

青木 ぜひ実践していきたいです!

大好きなインテリアには惜しみなく使うが、後悔はあまりない。
保護猫を2匹引き取り、家族として可愛がっている。
ボランティアで関わる動物との時間は、今の自分に不可欠。

レシート○×チェックは、簡単だけどとても効果的。

今回、青木さんが行った数日分のレシートチェックは簡易版。理想は2日に1度程度、難しければ、最初は週1の頻度でいいので、買い物結果の良し悪しを振り返ってみよう。

レシートごとに、よい買い物には◯、失敗と思うなら×をつけていく。金額の大小にかかわらず、自分の気持ちに響いたかどうか、幸せになる買い物かどうかが◯にする基準。「よかった!」と即答できず、自分に言い訳するものは×の可能性大。判断が甘く、すべて◯ばかりになるなら、さらによりよい買い物だったと思えるものには二重丸をつけ、差別化していこう。1カ月やり終えたら、最初の頃の判断が本当に正しかったか見直すと精度が上がる。

あなたが「なぜ」買ったのか、財布を開いてお金を出し、物やサービスと交換した時の「気持ち」にフォーカスし、よい買い物、ダメな買い物をチェックし続けることで、自分にとっての正しいお金の使い方が身についていく。2〜3カ月チェックを続けてみると、自分の変化に気づくはず。

×がつく買い物をした時を思い出し、コメントを添えておくのもいい。心境、体調、状況など、買い物で失敗する自分のパターンが見えてくる。
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