知られざる節分の寄席模様をご紹介。│柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
お正月の寄席は元日から10日までの初席(はつせき)、11〜20日までの二之席(にのせき)が済むといつもの落ち着きを取り戻します。ところが、そのすぐあとに再び大いに活況を呈するイベントが二月三日。そう節分です。
昼の部・夜の部ともに番組が3分の2ほど進んだお仲入り(休憩)に入る前に、楽屋にいる出演者一同が高座に勢揃い……といっても、出演後すぐに帰ってしまう人もいますから全員じゃありません。それに寄席の高座は狭いから、そもそも全員揃ったら窮屈すぎます……そして、お客席に向けて豆まきをします。豆ばかりではなく、出演者はじめ芸人の手拭いや寄席のご招待券も一緒にまきますから、毎年この日は楽しみにしているお客さまでどの寄席もいっぱいの入りとなります。
その中で新宿の末廣亭は、ちょっと趣向をこらして、着物の上につける上下(かみしも)を用意しておりまして、より一層雰囲気が盛り上がります。しかしながらこの上下、相当以前から使っているものらしく、完全に昔の日本人体型むき。身長180cmの私が着用すると、袴はヒザ丈しかありません。子供の七五三の衣装を借りて来たようで、それを見てお客さまは大笑い。なんだか別の盛り上がりかたをしてしまうんですよね。
ともあれ寒い日の続くこの季節にみなさんの心があたたかくなれて、素敵な“落語日和”をお過ごしいただけるお勧めの行事。しかし、なぜか昔から落語や寄席の紹介をする本などで、あまり取り上げられていない気もします。そんなわけで今回は〝知られざる一大イベント〟のお知らせでした。
柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com
『クロワッサン』1014号より
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