知的障がい者バスケットボールの存在は、この映画を観る前から知っていた。ただし残念ながらネガティブな知識だ。2000年のシドニーパラリンピックで、バスケットボールの金メダルチームのほとんどが、知的障がい者と偽った健常者だったと分かり、金メダルをはく奪された。この事件を機に、パラリンピックから、全競技の知的障がいクラスが一時期排除された。バスケットボールの知的障がいクラスは、未だ実施されていない。
映画は、まさにその金メダルチームだったスペインが舞台となる。個性豊かな知的障がい者のバスケットボールチーム「アミーゴス」を率いることになったのは、プロチームのサブコーチをクビになりたての負けず嫌いなマルコ。マルコはアミーゴスのメンバーと触れ合うことで、自分に足りていなかったものを得る。またアミーゴスのメンバーは、バスケットボールの技術やチームプレイを学んでいく。
この映画を観ながら、車いすバスケットボール元日本代表キャプテンの根木慎志さんのお話を思い出した。根木さんは障がいについて「僕たちは障がいを持っているんじゃない、そこにある段差だったりが障害になるだけ」と言っていた。階段だったり、心のバリアだったり、そういったものこそが障害なのだ。
いよいよ2020年の8月25日に東京パラリンピックが開幕する。日本人のパラリンピック認知度は98%を超える一方で、観戦希望者は20%程度に留まるそうだ。だが、自国開催のこの大会を観ないなんて、もったいないと声を大にして言いたい。リオパラリンピックを取材した際、車椅子バスケの3Pシュート決定率の高さ、ボール競技のボッチャでは針の穴を通すような正確な投球スキルなどを目の当たりにした。スポーツとして単純に面白い。
それに加え、同一都市で2回開催されるのは東京が世界で初めてとなる。だからこそ、そこにどんな意味を見出すか。映画にはそのヒントが多くちりばめられていた。