南仏の村で二週間過ごした。仕事のための海外出張だったけれど、美しい朝焼けや自然の中での生活を撮った写真は、バカンスに行っていたと勘違いされそうな、ゆったりとした時間が写り込んでいる。
村の郵便局では地元で作られたワインや蜂蜜も売っているし、美味しいパン屋さんも、友人が世界一美味しいと自慢するマカロンのお店もある。
食事の買い出しなどには、車で15分ほどの隣町に出かける。月曜日にはマーケットが出て、新鮮な野菜やチーズ、お肉も揃っているし、大きなビオのスーパーもある。そのスーパーではパンを売らない。以前友人が「パンはないの?」と店員さんに聞くと、「パンはないよ。ここでパンを売ると、町のパン屋さんがつぶれちゃうでしょ」と言われたそうで、ビオスーパーの哲学に感心した。何より、小さい村に個性的で面白い人たちが集まっていることに驚いた。
私の友人はダンサーとジャグラーのカップル。ジャズサックスプレーヤーや役者、マカロンを作っている、パリの人気店にいたパティシエも住んでいる。文化的、技術的にとても豊かな人たちが集まるから、子供たちに本格的な作品を見せようと始まった村の文化祭の話を聞くと、あまりに魅力的な催しで、次回はその時期にわざわざ来たいと思わせてくれる。
正直、ちょっと出来すぎていて嫌味なくらいだと思っていたが、今年は村の文化祭の作品に出演しなかった友人の、その理由を聞いて少しホッとした。人間関係が難しくなってきたからだという。そうそう、何処にでもそういう難しさはあって、完璧に見える場所だって例外ではないのだ。二週間しかとどまらない人間は、難しいことに首を突っ込む必要がないから、素晴らしいところだけを見つめられる。
今後も、色々なところへ行って素晴らしいと思える体験は続けたい。そして、私が今居る場所で、小さな悩みと付き合いながら、私なりの、この場所なりの豊かさを味わっていこうと改めて思った。